ひまわり感想まとめ文

ぶらんくのーとさんの同人AVG、ひまわりの感想文をまとめました。もちろんネタバレですのでご注意ください。



「アクアアフター」の感想も追加しました。



◆1・購入
「もう美少女ゲームも結構プレイしたし、何となく熱気も薄れてきているようだし、卒業の頃合かなあ」などということを漠然と考えつつも、気づけばぶらんくのーとさんの「ひまわり」を購入したりしております。評判が良いということで楽しみ。


現在まだ序盤。アリエスの正体が気になるところです。コピーには「ロリっ娘宇宙人同棲ADV」ってありますけどね。



◆2・アリエスシナリオ終了
これは素晴らしいですね。現段階では評判どおりの面白さです。過去幾度か出会ってきた名作と同様のパワーを感じますよ。中盤まではややのんびりでしたが、終盤に一気に加速。興奮冷めやらぬまま次回予告に。もうここまできたら止められないって感じです。



◆3・星乃明香里シナリオ途中
ただいま絶賛進行中です。もうずっぽりとはまっちゃいました。「ひまわり」タグを急遽作るくらいに。


何が良いって、この章はアクア視点なのがまず良いですよ。ヒロイン一人称美少女ノベルはそれだけでぐいぐい引き込まれてしまいます。もちろん文章が上手ければ、ですけど。Fateのプロローグも良かったなあ。


寝不足になって仕事に支障が出そうなこの感覚は、ひぐらし祭以来でしょうか。熱中度ではそれこそFateを連想してしまうほどです。ワクワクドキドキ。



◆4・星乃明香里シナリオ終了
良質の物語に出会ったときの、打ち震える心、得も知れぬ衝動。物語好きな人は、きっと皆この快感の虜になっているに違いないです。素晴らしかった。



◆5・アクアシナリオ終了
胸に迫る強い想い。明かされていく真実。圧巻怒涛の密度で描かれる物語を堪能し、心底しびれました。ああ、これが僕が美少女ゲームに求めているものなんだなあと再認識。SF関連用語で「センス・オブ・ワンダー」という言葉がありますが、今作はまさにこの、感覚を存分に味あわせてくれます(……と、少なくとも僕は思います。どうやらセンス・オブ・ワンダーの定義は萌えと同じくらい広いみたいですので)。


セカンドエピソードから、実質上のメインヒロインを張ったアクアの物語も、これで一区切り、でしょうか。正直、ここでオーラスでも僕は今作を絶賛していたことでしょう。ああしかし、どうやら、まだ2つもエンドがあるようではないですか。嬉しいかな悩ましいかな。何が悩ましいのかというと、アクアにあまりに感情移入したために、次のシナリオに進むことが彼女から離れるようでさびしいのであります。こんな思いを抱かせてくれるゲームのなんと貴重なことか。


アオイを失った陽一と、大吾を失ったアクア。傷ついた二人が寄り添うまでの物語。何しろ前章でアクアの過去の姿をたっぷりと見ているだけに、安易にするとアクアがただの浮気ものになるところですが、そんなことは全然なく、「過去から一歩抜け出すことが出来て本当に良かった」と心から祝福したくなる、素敵な二人となってくれました。


何より印象に残るのはアリエスの糾弾ですが、このあたりはまあ、みんな若くて、良くも悪くもナイーブなんだなあというところがビシビシ伝わる名シーンです。陽一もアクアも、昔好きだった人から確かに離れようとしている。だから今この二人が恋人同士となったとしても、それがいつまでも続くという保証はどこにもない。でも、それでも二人で支えあいたいという、心からの想い。感動的ですねえ。


実は陽一が飛行機事故にあっていなかったというのも驚きの事実。そう来ましたか。Hシーンで、例のごとく避妊しない方々だなあ、などと突っ込もうかとも思っていたのですが、まさかそれまで伏線だったとは!? そんなのお釈迦様でも予測できないってものですよ。やられました。


細かい不満はあります。まずはアクアの攻撃性が行き過ぎに感じられること。実弾をいきなり人に向けて撃つというのはさすがに引きます。一歩間違えれば銀河は大怪我ですよ。というか、現に怪我してます。宇宙育ちで常識がないんでしょうか。あるいは自らの能力のため、「怪我というものは一瞬で治せるもの」という感覚が身についてしまっているのかも知れませんが……。選択肢もちょっと間違えると機嫌を損ねちゃいますしね。難しい人です。


それと、陽一とアオイの関係が、TIPSでちょっと出て来るとは言え、感情移入できるほど描かれてはいないこと。そのため、陽一のアオイに対する思いがあまり伝わってきません。ここはもったいないですね。もっとも、今後描かれてる可能性はありますが。


あとは、このルートがファーストエピソードと両立しないことですかね。マルチシナリオ形式のゲーム上やむをえない部分はありますが、ファーストエピソードの最後、陽一と銀河がひまわり号を打ち上げる場面、そしてアクアが大吾の本を読む場面が結構良かっただけに、今シナリオでは実現しないのが惜しい。


さて、アクアに後ろ髪引かれつつ、明香シナリオに行ってみますか。



◆6・西園寺明香シナリオ他、全シナリオ終了
なんだか泣きそうです。といっても、感動のためというのとはちょっと違い、かといって、出来が悪かったからというわけではもちろんありません。ただ、いつまでも続いてほしかったこの物語の世界と、別れなければならないということが純粋に悲しいのです。ああ、この喪失感。これまでやった傑作とも、また一味違う心残りはなんだろう。もっともっと、プレイしていたかったですよ……。


明香の体が弱い、ということはこれまでのルートからそれなりに予測できたことではありますが、実は20歳だったというのはまったくの想定外。いきなり年上キャラに変貌し、それだけ残り時間が少ないという切迫感が加わるとは。……にしても、律儀に入部届けに正式な生年月日書いてたんですね。あえて隠すことではなかったということなんでしょうか。


良い話ではあったんですが、やはり明香のキャラ自体がやや薄いかな。もっと色々と感情にくるものがあると良かったんですけどね。3人で宇宙部という活動がもっと見たかったです。ただ、作品の最後を飾るシナリオだけあって、明のこと、銀河の、そして陽一の目指す道といったテーマがまとめられていたのは良かったですね。


西園寺家に居ついたアリエスとアクアの姿も興味深い。アリエスの記憶は戻らないままながら、ひまわりにいた時よりもやたらアクアとの親睦が深まっているようなのですが、なにをしているのやら。アクアはやっぱり良いですね。アクアシナリオでは結構感情的になるシーンもありましたけど、僕は彼女が落ち着いてしゃべっている時が一番好きです。「陽一と結ばれる未来もあったのかもしれない。でもそれはもうありえない世界」 半分メタ的なセリフではありますが、こういった思考。それに陽一をからかう時の機知、明に対する感情が「自分の片意地」と認められる自省。最後に別れを寂しがる姿を見て、ああ、このシナリオでも、彼女は変われたんだな、と思いました。良かった。ただ、ちょっと気になったんですが、アクアやアリエスも明香里の病弱体質を受け継いじゃってるんでしたっけ? 目赤いですし。あともう一つ、ルナウィルスって明香に感染してません? 寿命短いうえに記憶障害なんてことになったら辛すぎるのですが……。


エピローグは、それまで直接的な出番がなかった秋桜IMEで変換できない……)の視点で謎をはらみつつ終了。蛇足のような気もしますが、続編につながるのなら歓迎します。一応考察というか、書かれたことをそのまま繰り返しますと、「秋桜」と「ひまわり」の中にルナウィルス自身の記憶が埋め込まれていて、ある程度年を取ると覚醒し、人類の敵となる、と。燃える設定ではありますが、さすがにちょっと突飛かな? この時点で明香が健在かどうかも気になるところではありますが、明確にしないのは正解でしょう。



アクアシナリオ中に分岐した葵シナリオも回収。バッドエンド一直線かと思いきや、意外としっかりした作り。そして悲しい話。しかし、TIPSを最後まで見ると印象が一変する話でもありました。今作ではアクアシナリオに続く、ハッピーエンド、なのかもしれません。



◆7・作品総評
<シナリオ>
なんといっても本作一番の売りどころ。公式サイトの情報と「ロリっ娘宇宙人同棲アドベンチャー」というコピーからでは到底想像のつかない奥の深さがたまりませんでした。数々の謎が収斂していく感覚は、まさにSFの王道! 他の方の感想でも名前があがっていますが、「車輪の国、向日葵の少女」(ヒマワリ縁ですね……)、あるいは「シンフォニック=レイン」を思い出しましたね。作りや仕掛けこそ違いますが、その雰囲気が。あと、連想したといえば「ロケットの夏」も忘れてはなりませんか。


なんといっても白眉はセカンドエピソード、星乃明香里シナリオでしょう。ここはもう圧巻。当初は脇役かと思われていたアクア視点での近未来宇宙生活。悲しい初恋物語。月の暗黒を行く二人の、超絶的なまでの孤独。まるで読むほうも月に降り立ったかのような臨場感。この辺は「月は地獄だ!」及び「星を継ぐもの」も連想しました。


そして、絶望のセカンドと対比しての癒しと前進の物語であるアクアシナリオ。こちらもセットで素晴らしい。見事としか言いようがありませんでした。やっぱりヒロインの一人称は感情移入に絶大な効果がありますねえ。Fateの凛の人気も、プロローグによる部分が結構大きいかと。


文章は、特筆するようなものは感じませんでしたが、逆に言えばそのクセのなさが万人受けしそうです。長さも適度で(明香はちょっと短いと感じましたが)、次へ次へと読み進めたくなる魅力がありました。


<キャラクター>
総評というかキャラ語りですね。


○アリエス
物語最初に登場し、サイトのキャラ紹介でも一番上の、一見メインヒロイン。しかしてその実態は、ほとんど全編通した脇役でした。いやまあ、一応ファーストエピソードではヒロインではありましたけどね。彼女の本領というか本性はやはり他のシナリオでこそ発揮されていると言えるでしょう。


正直言うと、いまいち性格のつかめなかった感はあります。序盤の記憶喪失時には幼さと純真さが強調されていましたが、同時に卓越したプログラム技能と、陽一への思慕等、年相応以上の感覚をもつ部分もあり、時にはアクアに対しても強い意志と言葉で立ち向かう。なかなかに印象が統一しづらかったり。もちろん、総合的には良い子なんですけどね。


アリエスシナリオでは事故の真相を知ることなく、罪の意識を背負ったままに、明香シナリオでは記憶すら戻らずに宇宙に帰った彼女。その先待つのはどんな道なのでしょうか。やっぱり葵シナリオこそが彼女のトゥルーなのかもしれませんね。


ところで、『触るな』エンドって、あれ結局なんだったんでしょうか?



○アクア
いわずと知れた本作のメインヒロイン(認定)。当初は2番目、3番目のキャラかと思いきや、予想を覆す快進撃で「ひまわり=アクアの話」という認識を完全に固めたパワフルなお方です。ご多聞に漏れず、僕も好きですよアクア。パッケージをよく見ると、アクアのほうがアリエスより目立ってるんですよね。いやいや、騙されました。


ところで、彼女の中に目覚めた明香里の記憶については、結局明は知らないままなんでしたっけ? まあ、その後2年で知った可能性はありますが。彼女にとって明香里は一応母であり、同時にその記憶を持っているわけですから、本当にややこしい関係ですよね。「娘」である明香の成長した姿を見たとき、複雑な思いが去来したのではないでしょうか。


シナリオは本作では貴重な掛け値なしのハッピーエンド。どうかいつまでも笑顔で。



○西園寺明香
もっと出番がほしかったですねえ。他のヒロインに比べると地味な感は否めません。母親をなぞるように、陽一と銀河と一緒に宇宙部で和気藹々な姿が見たかったですよ。ところで、彼女が後ろ手に組んで半身になっている姿勢は、どこか八神はやてを思い起こさせる絵でよかったと思います。はい。



○アオイ
もっと出番がほしかった人その2。日向葵シナリオも実質はアリエスシナリオである状況を見ますに、せめてTIPSをまとめてグレードアップしたようなショートエピソードが見たかったです。



○雨宮大吾
アクアがあこがれるのも納得なかっこよさ。まあ、いくらなんでも犯罪的なセクハラ過ぎて、惚れる前に放り出されるべきであろうと思うのですが、あけっぴろげな人懐っこさと行動力、子どものような純真さは確かに一代の英雄、規格外の人物と思わされました。



○日向陽一
一応主人公なのにあまり語ることが思い浮かばないような。でも取り立てて反発するようなことがありませんでしたから、プレーヤーの感情移入の対象としては十分だったと言えましょう。



<絵>
同人ということもあり、それほど高い期待をしないレベルで言えば十分かと。立ち絵がしっかりしていた分、一枚絵がやや弱く感じられました。それでも、月面上のアクアと大吾の図は秀逸。



<BGM>
音楽鑑賞モードを開くとびっくりの曲数。これだけ多いと一曲あたりの印象が薄くなってしまうのはやむをえないところでしょうが、場面場面でしっかりと役割を果たしていたと思います。


ただ、惜しむらくは歌のないこと。もちろん同人作品としての難しさはあることでしょうが、エンディングでたとえば家族計画や君が望む永遠のような、切なくも前向きなバラードを流してくれた日には、おそらく落涙やまなかったことでしょう。



<システム>
各種機能を取り揃え、不足は感じられません。快適です。ただちょっとだけ気になったのが、アスペクト比固定の問題。どうやらソフト側で自動的にアス固定してくれる優れものみたいなのですが、微妙に上下が切れているような。おまけに、ディスプレイのアス固定モードを有効にしていると、二重に補正がかかって画面が細長いことに(笑)。まあ、プレイ上支障は無いレベルですけどね。



<まとめ>
非常に面白い作品でした。良質なSFであり、青春もの。過去プレイした美少女ゲームでもトップクラスの評価で、これで1365円という価格は、コストパフォーマンスがすごすぎで申し訳なくなってしまうほどです。未プレイの皆さんには、ぜひともプレイをお薦めいたします。