若おかみは小学生!

全くのノーマーク、というかそもそも作品名すらつい数日前まで知らなかったのですが、何やら評判が良いらしいということをいまさらのように聞きつけ、上映が終わらないうちにとあわてて鑑賞してまいりました。


うん、良かったです。「ものすごく感動」とか「大傑作」というような感じではないですが、全方位オール4的に手堅い、老若男女楽しめること請け合いの一作でしたね。以下ネタバレ含む感想です。


可愛らしい絵柄とは裏腹に、優しい両親をいきなり事故で失ってしまうというシリアスな展開。引き取られた祖母の家で「おっこ」こと織子の若おかみとしての奮闘が始まりますが、なによりもまず、おっこが頑張り屋さんなんですよね。前向きで応援したくなる。


ただ、彼女とて普通の小学生女子なわけで、表面上はそれほど見せないものの、心中では両親の死を深く引きずっている。それが夢のシーンとして現れてくるわけですが、おっこの中では「本当は生きているんじゃないか」という希望を捨てきれていないと。だから今作はおっこが両親との別れを受け入れるまでの物語と言えるのでしょう。


そしてそんな彼女を支える役割を担ったのが幽霊のウリ坊や美陽。幽霊ありの世界観とは驚きましたが、おっこが大変な日々の中でもくじけずに進んでいけたのは彼らの存在があったからこそで、両親の代役をウリ坊たちは勤めてくれたと言えるのかもしれません。


若おかみとして様々な客に接し、お客さんに喜んでもらえることの嬉しさを知り、同時にお客さんから教えられる優しさもあって、経験を積んでいくおっこ。彼女が町になじみ、自分は花の湯の若おかみであると言えるようになった時に、両親やウリ坊たちとのお別れの時が来るのでした。そのお別れは全然涙涙なものではなくて、前向きなさよなら。爽やかなラストでしたね。


ただ、ラストについてあえて言うのならば「若おかみ」という公的な立場に自分を閉じ込め過ぎじゃないか、まだ子供なのに自分を殺し過ぎじゃないか、という懸念もなくはありません。でもまあ、人間、時には私的に、時には公的になるわけで、そこのところを上手いこと使い分けておっこも育っていってほしいものです。


おっとそうそう、アニメで重要な作画演出について触れてなかったです。と言っても、マッドハウスなのでこちらも手堅い。超絶作画とかそういうんではなく、良い意味で子供向けにわかりやすい作りです。コミカルなシーンでは子どもたちの笑いも起きてましたし。


さて本作。上述のように全然知りませんでしたが、児童文学のベストセラーだったのですね。加えてテレビアニメ版もあったとは。TV版は横手美智子さん構成ということで、そちらも気になるところですが、ともあれ劇場版はおなじみ吉田玲子さんです。相変わらずというか上手いなあ。考えてみれば今年見たアニメ映画は「リズと青い鳥」以来ですから、どっちも吉田さんということに。おそらく長い原作をうまくダイジェストしてるんでしょうが、完成度高いです。こうなると原作も気になってくるなあ。


なお、旅館ものといえば「花咲くいろは」を思い出すところ。もちろん、おっこと緒花とでは年齢も境遇も違うわけですが、とりあえず出だしの働き出すところは、半ば強制だった「花いろ」に比べ、一応本作のほうが自由意志でやってる感はあってよかったですね。いやまあ、実際は半分以上ウリ坊に言わされてるんですが、とりあえず周囲の目線としては、おっこの意志を尊重するというベースが感じられる。とりあえずそこだけでほっとしますよ。