「ソードアート・オンライン −オーディナル・スケール」

最初はさほど観にいく気もなかったのですよ。SAOは嫌いな作品ではないですが、映画に行くほど大好きというわけでもないしなあ、という。しかし、例によってネット上の評判が良さそうだったので鑑賞することに。


いやあ、大変良かったです。


どのくらい良かったかというと、感涙して、帰った後に録画してあったSAOの一期を見返すくらい良かった。これだけしっかりSAOとして、劇場版として面白い作品になっていようとは。もちろん、アニメの1期2期(あるいは相当する原作)に触れているのが前提ですが、大満足でした。


以下ネタバレ感想。


時系列設定としてはSAO2期が終わってから2週間後ということで、割と短いスパンでした。視聴者の意識としては数年ぶりという感じでしたが、そこはそれ。


今回のメインガジェットはこれまでのフルダイブ型VRと違い、AR型の「オーグマー」。PSVR対ポケモンGO的なイメージですが、そこはSAOの世界ですので、現実よりも遥かに優れたAR体験を映像で見せてくれます。フルダイブもそうでしたが、「これできたら絶対流行るよなあ」と説得力を感じさせるところがSAOの強みですね。ゲームだけじゃなく日常クーポンとかに使われているあたりもリアルです。


本作一番の魅力は、各キャラクターがツボを抑えてきっちり魅力的に描かれているところでしょう。キリトは、最初はAR戦闘にはなじめずに、らしくなく弱々でしたが、アスナを救うために勇敢に動く(加えて、アスナに対してきっちりと愛情を示す)のはしっかり主人公でした。


アスナは、キリトとは違い現実世界でも高い運動能力で格好良いところを見せつつ、SAO世界の記憶を奪われたことによる弱気な面ものぞかせる。それでも、本質である前向きさは変わりませんでしたね。ラストバトルでの役割はヒロインというよりもヒーローでした。マザーズ・ロザリオを披露するところは、本作一の感動的場面でありましたよ。「技の名前はマザーズ・ロザリオ。きっとアスナを守ってくれる」。……泣けるなあ。


リズとシリカシノンの女子組も、脇役とはいえ出番はしっかり。特に、「自分はSAOサバイバーじゃないから」とバトルに参戦したシノンの飄々とした風味が良かったです。シリカはやっぱり冒頭の歌ですかね。意外と乗せられやすい・乗りやすい性格だったようで、ちょっと新鮮でした。一方、リーファはちょっと出番薄でしたがそこはしょうがないか。むしろクラインのほうが目立ってました。そうそう、ユイもなかなかの活躍ぶりでしたね。フルダイブしなくても会えるという意味では、オーグマーはユイに一番恩恵があったのかもしれません。


物語は、SAOサバイバーの記憶を奪って娘を「生き返らせる」ことを狙った重村教授の陰謀が軸でした。「記憶スキャンしても消えるのはおかしいんでないかい?」という根本的なツッコミはありますが、そこは目をつぶるところです。大枠として「SAO世界で暮らした大勢の目立たなかった人々のことを忘れない」というテーマ、そして「2年越しの100層クリア」という、ファンにはたまらない展開をまとめてくれたこと。この2点で十分すぎるというものです。


ただ、一点疑問を挟むならば「最後アスナ以外の記憶はどうなったの?」というのはあります。まあ、話のテーマからして「たとえ辛いものでもSAO時代の記憶を大事に」であるので、モブだからと言って彼らの記憶が戻らないなんてことはないと思いますけどねえ(風林火山のメンバーもいますしねえ)。


作画や音楽もさすがに豪勢な出来栄えでした。映像はARの楽しさを存分に感じさせてくれましたし、何よりラストバトルの迫力がすごすぎた。あそこだけでも何回も見たいくらいです。梶浦さん節がたっぷりなユナの歌も良かったなあ。


ここまできて前言撤回になりますが、僕はどうやらSAOの世界を「映画に行くほど大好き」だったようです。ここまで2期アニメを見てきて、本作を見ることが出来て本当に良かった。アニメファン続けてる甲斐がある、とさえ思いましたよ。


てことで、アニメ3期よろしくお願いします。