SHIROBAKO 第23話「続・ちゃぶだい返し」

話数も残り少ないと思うと、楽しみなのに見るのがもったいないような、ちょっと怖いような。こんな思いを抱く作品はまどマギ以来かなあ。それだけ心を掴んだ作品ということです。


さて、原作者の総ボツに、すぐさま出版社に乗り込むナベPと葛城P。当然今までの経過と現状のスケジュールを伝えて、予定通りやらせてもらうように頼みますが、先方はまったく聞く耳を持ちません。変な話編集の茶沢だけならともかく、その上司も、原作者は神として、その意向を絶対視していたのは意外。業界における原作者の地位はそれほど高いものなのでしょうか? 世の中、どう見ても原作者の意向を尊重していないだろうというような作品も結構あるのですが……。ケースバイケースってことなんですかねえ。


やむを得ずムサニで善後策を講じようとしますが、スケジュールのきつさのみならず、原作通りではバッドエンドにしかならないという重苦しさが漂います。それでも無理やり脚本を書いてくる舞茸先生はすごいですが、監督脳内の最終回想像図では、やはり視聴者は納得いかないでしょう(えくそだすっ!の初期案だって似たようなものじゃないかと言えばそうですが)。


と、ここで登場したのが本田さんでした。う〜ん、監督じゃないけど、やっぱり痩せた本田さんには違和感が。ただ、「万策尽きてない」と監督を励まし、原作者へのメールを送らせるあたりは流石に阿吽の呼吸と言いますかねえ。本来、これはデスク宮森のすべきことであるのでしょうが、そこはやはり経験不足ということですか。


夜鷹書房に乗り込む監督。いきなり西部劇風味でかなりギャグかかってましたが、これはちょっと雰囲気的に違和感があったかなあ。監督の心象風景的な描き方だったのかもしれませんが、滑り気味だった気がしました。というか、もっと別の所を待ち合わせ場所にしてください、野亀先生……。ともあれ始まる、監督と原作者の直談判。野亀先生が普通にカッコ良いというか、そもそも普通に喋れるのに驚かざるを得ませんが、その内容はなかなかに深い。仲間を助けるために飛ぶのではなく、ありあ自身が内面から飛びたいと思わなければならない。対立ではなくて、対話からの止揚が生まれゆく瞬間でした。よっ、名監督!


そして最後に追加されたキャサリンの妹・ルーシー。その声に抜擢されたのはずかちゃん! そうかあ、そう来たかと。キャサリン役で記憶にとどめておいて、その妹だから起用しようと。ここは実に自然な流れで素晴らしい。


驚かせようとしたのか、単純に時間がなかったのか、あおいにも言っていなかったようです。しずかが部屋に入ってきた時のあおいの表情が、喜びではなくてずっと驚きモードだったのがまた、リアル感ありました。そして、ルーシーを演じるしずかを見ている時の、こちらの緊張と言ったら。子供の舞台を見ている親の気持ち的な(いや、なったことはありませんが)ドキドキ感でしたよ。でも、短いシーンとはいえ、しずかはやり遂げました。良かった、本当に良かった。


前回、ちょっと腐り気味にお酒を飲みつつ愚痴っていたしずかですが、多分、人間たまにはそれでも良いんです。そんな日ばかりだとさすがにダメですが。夜が明けたらまた気持ちを入れ替えて頑張っていればきっと道は開ける。これまでの彼女の苦労を見てきただけに、感動もひとしおでしたね。


そして涙涙のあおい。これは、ずかちゃんの参加を喜んでということも当然あるでしょうが、それ以上に、ありあに自分を重ねてということだと感じました。自分は何をしたいのか、あおいがずっと迷っているというのが今作の底流にあります。三女の当初案でのありあのセリフ「私にはやりたいことなんてない。でも、皆がやりたいことがあるなら、それを援護することは出来る」が、あおいの目標なのかなとも思ったのですが、どうもそれではやはり、十分ではなかったということなんでしょう。誰かのためではなく、あおい自身のやりたいことのために。


ありあはそれを、ルーシーたちが暮らす台地を守りたいという願いに見つけました。あおいの願いが具体的に何になるのか、僕の浅い読みでは確とはいえませんが、次回にきっと、ひとつの答えをだすことになるのでしょう。予告が止め絵で少々心配になりますが、そういうメタ的な演出、と思いたい。