Fate/Zero 第19話「正義の在処」

切嗣過去編第2回。ナタリアと暮らして、フリーの「狩人」となった切嗣。魔術師回路は痛みを一生背負うということで、難儀なことです。死地をくぐり抜けながらも腕を上げていく切嗣でしたが、世の中の悪と悲劇があまりにも多いことを目の当たりにし、絶望感を深めていくのでした。そしてついには「これ以上の犠牲者を出さないために」母親のようにも思っていたナタリアごと、飛行機を爆破することに。


ふと、サンデル教授の「これからの「正義」の話をしよう」で出ていた例え話を思い出しました。暴走する電車の前に1人を突き落とせば、その先にいる5人を救える。突き落とすのは正義かどうか、という。まあ、善悪の判断はともかく、少なくとも普通の人には積極的に他人を殺すのは難しいでしょう。でも、切嗣はそれが出来てしまう人なんですね。素質といえば素質。でもそれゆえに、本人の抱える苦しみは大きくなるばかりなのでしょう。


最後の慟哭。「自分でやっておいて自分で嘆くなよ」と言いたくもなってしまいますが、彼にとって「犠牲を増やさない」というのはもう絶対の教条なのですね。これは譲ることができない。しかし、ナタリアに対する愛情も本物で、だからこそ嘆くと。


この2話はセイバー達の登場がなく、聖杯戦争の本筋からは少し外れたエピソードではありましたが、その分、いつも以上に力の入った見せ方といいますか、まさに映画のような濃厚な陰影、音楽が印象的でした。あらためて本作の力を実感させられましたね。