花咲くいろは 第26話「花咲くいつか」

今はまだつぼみ。それでも、それぞれの道を目指して歩いていく……。最終回、さわやかにしっくりと締めてくれました。喜翆荘が閉じ、緒花は東京へ帰る。そこまでは予想できましたが、将来の第2代喜翆荘への希望を残した良いラストだったと思います。


緒花と孝一、そしてぼんぼり祭り自体の描写は前半でスピーディかつ必要十分に収め、後半はきっちりと今後のキャラたち、そして喜翆荘とのお別れをじっくり描いたのが上手いです。特に、がらんと人影のない喜翆荘の姿は、今作のレベルの高い背景美術と相まって、非常に効果的に胸に迫るものがありました。こういう演出は物語が長く続いたほど効果が大きい。欲を言うと1年やってたらもっと感動的だったでしょうが、それでも2クール、半年分の重みを感じました。作中世界での経過時間もそのくらいですしね。


「四十万スイになりたい」


緒花の願いはちょっと意外でした。ここ数回の緒花とスイの有り様を見ていると納得する面もありますが、今作の序盤を見たとき、スイの「古さ」と緒花の「新しさ」が対立した上で昇華する展開になるのかなと思っていただけに、これでは丸ごと緒花がスイに「負けた」ようなものではないかと少し残念にも思ってしまうのです。


もちろんこれは単純な見方であり、スイがただの頑迷固陋な人物でないことは描かれてましたし、緒花も自分がそのままスイのようになる、という意図は全然ないのは分かります。菜子のいうように「勝ち負けじゃない」のでしょうけどね。ただ感想としてなんとなく。



さて、力のあるスタッフのオリジナルアニメとして大きな期待のかかった本作。第1話のシビアな展開には期待と不安が同時に高まったものですが、終わってみれば緒花の力強さで1話以上に暗い展開におちいることも無く、旅館舞台の人情ドラマとして高いレベルで楽しませてくれました。


正直、緒花、孝一、民子、徹をめぐる恋愛模様はあまりうまく扱えてなかった気がしましたが(特に、緒花の孝一に対する「好き」が最後まで良く分かりませんでした)、多くのキャラがちゃんと「らしい」見せ場を持っていたのは良かったです。特に巴と菜子の回が好印象でしたね。蓮さんの単独エピソードがなかったのは惜しいところ。また、喜翆荘外の人間でありながら、もしかしたら一番緒花と気が合っていたかもしれない結名の存在感もなかなかでした。民子はちょっと感情不安定でとっつきにくかったかなあ……。料理に対する熱意はすごく伝わるんですが、八つ当たりはいけませんよ。


あとは、孝一に想いを寄せていたメガネっ子の波子ちゃん、最後出番なしでフェードアウトはちょっと可哀想な気もするです。


ともあれ、スタッフの皆さん、お疲れ様でした。