崖の上のポニョ

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久々の宮崎駿作品。往年のナウシカラピュタのような迫力と感動を望むことは難しいと承知しながらも、「それでも宮崎さんだし」と映画館に足を運ばせてしまうのはさすがの威光といえましょうか。


さてその本作、


「なんか変なものを見た」


というのが印象です。鈴木プロデューサーは「傑作だと思う」と監督に告げたそうですが、どちらかというと「怪作」という表現のほうが似合うんじゃないでしょうか。決して駄作では無いにしても。


千尋あたりから目立ち始めた物語のキレの無さと、逆に細部のこまごまとした動きの楽しさはいかにも近年の宮崎アニメなのですが、まず注目は背景のタッチですね。これまでとは一線を画したパステル調が、「子どものための作品」という路線を実証しているかのようです。


では、単純にポニョと宗介の童話風ハートフルストーリーなのかといえばそういう感じでもなく。実は僕が見て一番感じたのは「不気味さ」でした。それは、どこまでも追いかけてきて、今にも全てを飲み込みそうな波のうねりだったり、あるいは巨大な古代魚が泳ぐ海を小さなボートで進む底無しの不安感だったり、トンネルの暗さであったり、リサとポニョの母が話しているシーンの、まるで異界のように暗く区切られた一角の様子であったりするのですが、過去の宮崎作品ではここまで強くは無かった感覚でした。そこだけ捉えると、本当に子ども向きなのか怪しくなるほどです。怖かった。


なおストーリーですが、僕は最初、ポニョが宗介を尋ねて三千里なのかと思ってましたが、かなり違いました。宗介の母親であるリサがあれほど目立つとは予想外。彼女は良いキャラです。僕くらいの年代になると、ポニョや宗介よりもまずリサに感情移入しちゃいますよね(でもいきなりポニョを受け入れるのは無理です……)。宗介は両親を呼び捨てにするのはよろしくないと思います。


いつものことですが、とにかく作画は圧巻で、それだけでもアニメファン的には十分の価値はあります。総合的には、「単純な楽しさはハウル以下、妙な後味(良くも悪くも)は過去最高レベル」ってところですかね。夏休みということで子どもたちも多かったですが、歓声を聞く限りおおむね好評ぽかったです。