灰と幻想のグリムガル 総評

新アニメもぞくぞくと始まっていますが、忙しくてなかなか見られません。ともあれ、その前に今作について一言書いておかねばなと。


最初は全然ノーマーク。「よくある異世界ものか」程度だったのですが、冒頭からのゴブリンとの戦いでいきなり引き込まれました。いかにも初心者・素人である主人公たちのパーティに、ちゃんと意志を持って反撃してくるゴブリンたち。加えて、世界を引き立たせる背景の美麗さ。ちょっと衝撃的ですらありましたね。


そして、驚くべきことにその作画力は最後まで落ちませんでした。マナトのかたきを討ったゴブリン集団との決戦や、サイリン鉱山でのコボルトたちとの戦いでも、動きの一つ一つが細やか。単に「動きが良い」「絵が良い」というだけでなく、ちゃんと戦術や心理が伝わってくるのに唸らされました。いやあ、深夜アニメでもここまでのことができるんだなと。


絵のことばかり書いてしまいましたが、ストーリーも良かったですね。弱かったパーティが少しづつ強くなる様子を、様々な人間模様を交えつつじっくりと描いていました。強くなったと言ってもまだまだ強豪と言うには程遠くて、パーティと言っても全員が全員すごく仲が良いというわけでもない。抑制した美学というものを感じましたよ。


あえて言えば、女の子のかわいらしさはそれほど控えめではなかったといいますか、フェチ的な萌えエロアングルを結構放り込んできましたね。世界観的には多少違和感も発生しましたが、その程度はないと売れないのかなあ。ただ、戦闘時に太ももを露出しているのはどう考えても危険というか、本作に限った話ではないですが、戦闘がリアルになるほど無理が出てきちゃいますよね。まあでも、実際かわいかったから良しか。


ゴブリンやコボルトにもちゃんと知性があって、生活しているという様子が出ていたのも考えさせられました。今は普通に殺し合いなんかしてますが、多分後世になったら「種族間の融和」とかゴブリン権、コボルト権なんてのも生まれていくんだろうなあ。で、「昔はゴブリンを虐殺して野蛮だった」とか言われると。


それにしても、正直そこまで大人気とか前評判が高かった感じではないのに、ここまでハイレベルなアニメ化に恵まれるとは、作者さんも幸せだろうなと思います。期待されながらコケたアニメもたくさんあるのに、こういうのは運なんですかねえ……。スタッフの皆様、お疲れ様でした。