響け!ユーフォニアム 第8話「おまつりトライアングル」

「久美子って性格悪いよね」


そんな高坂麗奈の言葉と、山上からの美しい夜景が印象的だった第8話。お祭りで皆が浮き立つ夜、久美子と麗奈が交わした言葉と音楽。そして葉月の告白と失恋。「まさに青春」と言えるような楽しさと、切なさと、揺れ動く心情がいつも以上に美麗に、丁寧に描かれていて、今作でも屈指の傑作回でした。


さて、最初から追いまして。いよいよ秀一が気にかかる葉月。どうやらいつの間にかみどりにも話していたようで、みどりはやけに積極的に押していきます。「音楽は愛と死」だそうで。な、なるほど……。しかし、秀一があがた祭りに誘おうとしたのは久美子。最初は「なんで」と、きょとんとしていた久美子でしたが、秀一が去ったあと、次第にその意味にドギマギとしてくるのでした。アニメにありがちな鈍い主人公だと(男女問わず)この程度では何も考えないものなのですが、そこは基本リアルモードな本作ですね。つい秀一を意識してしまう久美子。とはいえ、この段階では確信まではできていないのでしょう。


「もしかしたら秀一は私のことを好きなのかも? いやでもまさかね」


くらいな心情かと推察します。と、ここで秀一からの誘いを誤魔化すように取った手が麗奈のものだった、というのがご都合ながらも実にうまい展開で、こう来たかと思わされましたよ。たしかに、このくらい強引なイベントがないと、久美子と麗奈が近づけそうにないですからね。


そしてお祭りに。みどりそっくりの妹は琥珀ちゃん。うむ、全国のサファイアさんには申し訳ありませんが、サファイアよりはまともな名前だという率直な感想を抱かざるを得ません。もう琥珀翡翠でいいですよ。以後は各キャラの様子もはさみつつ、やはり久美子、麗奈、葉月が見せ場となります。


「私さ、塚本のことが好きなんだけど」


予想以上に素早く率直な告白を見せた葉月。その勇敢さに敬意を評します。でも、秀一の返事はNo。うん、「チューバは影で支えるのが仕事なのだよ、塚本君」という葉月の言葉が健気で悲しいなあ……。頑張れ。


一方で、三角関係どころかまさかの四角関係気味な様相を見せつつ、山を登る久美子と麗奈。


「私、特別になりたいの」


口先だけでなく、本物の特別な人間になりたいという麗奈。これを思春期らしい無邪気な反抗とうぬぼれと取ることもできるかもしれませんが、世の中には実際にそうして特別になってしまう人もいるのでしょう。それがまた、演奏の主役となるトランペットという楽器の性質ともシンクロしてるのですね。


そして、麗奈が久美子を気にかけたのは、そんな自分の思いをわかってくれるであろうと期待していたから。それは叶えられたのでしょう。「やっぱり久美子は性格悪い」の笑顔が、同志を見つけたという麗奈の喜びを表していました。それにしてもここのあたりの描写がすごい綺麗すぎて、麗奈の指が久美子の顔をつたうところとか、スカートが舞うところとか、絶句のレベル。恐るべしは京アニです。


最後は2人の演奏で美しく、そして葉月の涙とともに締め(いや、ちょっとその後の教室のシーンもありましたが)。お見事でした。