残響のテロル 第11話「VON」

ナインが気球で飛ばした原子爆弾が高高度で炸裂し、東京は闇とオーロラに満たされるのでした。


まさか、本当に原子爆弾が爆発してしまうとは思ってなかったので驚いた。てっきりブラフだとか、あるいは、爆発前に取り押さえられるとか予想してたのですが、ナインの覚悟は本物だったのですねえ。成層圏の爆発のため、直接の被害はなし。もっとも、みんな肉眼で見てたのが大丈夫なのかちょっと心配です。まあ、さすがにその辺の考証はしているものと思いますが……。


さてしかし、この原爆作戦、どこまでが本来のスピンクスの計画に則ったものだったのか、イマイチわかりにくいですね。ハイブが出てこなかったら、もうちょっとあの謎々を続けるつもりだったのでしょうか。「殺さない」が基本路線のはずのスピンクスでしたが、今回は作中にも描かれていたように航空機が墜落の危機でしたし、医療機関も大変だったでしょう。間接的に犠牲者が出てしまったことも考えられます。元々は、もっと時間をかけて警告する予定だったのでしょうか。


そして、かつての施設で仲間たちの墓標を建てるナインに、合流したツエルブとリサ。彼らと彼女が過ごす一時はあまりにも平和で優しく、それだけに、その後の悲劇を予感させる切ない名シーンでした。


事件を起こすことで自分たちのルーツを、仲間たちの犠牲を知らしめたかったというナイン。ツエルブは米軍に射殺され、ナインは寿命(?)で倒れましたが、その願いはかない、1年後の芝崎とリサの邂逅で物語は幕。最後の引きがまるで映画のような見せ方で印象的でした。


ふむ、なんというか、なかなか語るのが難しい作品ですね。ただ、スピンクスの境遇には同情しますし、彼らの行動も心情的には理解できたかなと。当初、テロを肯定する作品になったらどうしようと不安視していましたが、ギリギリのバランス感にスタッフのセンスを感じました。もっとも、現実の国がどうとか社会がどうとかいう話ではなくて、あくまで架空の事件による個人的な恨みの話にとどまっちゃったのはいささか拍子抜けだったですかね。あと、最後米軍が都合よく悪者になりすぎでした。米軍の人が見たら怒るかもなあと思っちゃいましたよ。


ただ、言うまでもなく、不殺でもテロはだめです。最初の都庁爆発だって、どれだけの資本と情報が失われたことか。その損失を埋め合わせるのにまた人々が苦労しなければならないのですよ。原爆については上でも書いたとおり、間接的には相当犠牲者が出た可能性もありますし。


ということで、ストーリー的には色々と突っ込みどころもあったのですが、それでも全体的には作画演出音楽も良かったですし、最後まで見るだけの楽しさはありました