「とある飛空士への誓約 6」

もう6巻というより、まだ6巻というような密度の濃さで展開する「誓約」です。今巻はとうとう400ページ超え。だんだん厚くなっていく冊子に、読者としては嬉しい悲鳴ですよ。


さて、以降はネタバレ全開な感想です。




…………セシル出番なかったなあ。


いきなりそれかいと言われそうですが、他のキャラにそれぞれ見せ場があった分、手紙のみの登場はちと寂しかったのですよ姫様。ま、次巻はその分活躍しそうな雰囲気が漂ってはおりますが。


それはともかく、今巻の主役はなんといっても清顕とイリアでした。それぞれの国のエースとなった彼と彼女は、とうとう戦場で相まみえることに! 最新鋭機を任されながらも、清顕はかつての仲間たちを攻撃することに躊躇します。


「軍人である以上、敵を撃つのは当然の義務。友人も何も関係ない。」 それは正論です。「やらなければやられる」と。清顕とてそんなことは最初から百も承知のはず。ただ、そうは言っても、現に目の前に友人を見た時に、敵国人だからといって殺せる人間が、本当に正しいのでしょうか? むしろ理屈だけで任務を遂行できる方がよほど人として壊れているのではあるまいか? その問いかけと清顕の苦悩とが、行間からもひしひしと伝わるようでした。


それでも、最後は運命に引きずりこまれるかのように一騎打ちに。ここはかつてイリアが夢で予見していたシーンですが、そういえば、の予知夢能力ってな結局なんだったんでしょ? まあ、風呼びの力があるのなら予知夢くらいあってもおかしくはないのかもしれませんが……。ともあれ、決着はつかず2人は島に落ちていくのでした。ここで決着をつけないのは甘いといえば少々甘い展開です(ついでに言うと、レオ隊長やルルララの死をはっきり書いていないのも甘いと思います)。とはいえ、どっちか殺してしまってはそれはそれでまずいだろうとも思いますし、なんともかんとも。ただ、無人島で2人(すぐに2人じゃなくなりましたけど)な展開はミオの時もやったので多少の既視感は否めませんでした。それともこれは、あくまでミオとイリアをダブルヒロインとして書くための意図的に重ねたのでしょうか?


アクメドの手をとった清顕とイリア。それは祖国への叛逆かもしれませんが、もう十分義理は尽くした、もう良いよ、と言ってあげたくもなりますね。


舞台は飛んでウラノス方面。とうとうニナがウラノス王になってしまいました。彼女のカリスマ性は、風呼びの力を抜きにしても特別なものがあるのでしょう。幼い頃から利用されるうちに磨かれた容姿、演説力、度胸の良さ。やはり只者ではありませんね。それにしても、この展開は「恋歌」を読んでいた時には想像だにしていませんでした。彼女とミオとイグナシオらの(一応ライナも入れとくか)、今後の宮廷での戦いも見ものです。