「マンガで学ぶ生命倫理」

マンガで学ぶ生命倫理

マンガで学ぶ生命倫理

読みやすそうだったのでなんとなく手にとったのですが、これは予想以上に良書でした。タイトル通り、マンガを軸にしつつ生命倫理の各種問題に触れていくのですが、そのマンガがちゃんとキャラとストーリーが立っていて出来が良いです。まあ、絵はさほど凝ったものではありませんが、クセがなく万人受けとも言えましょう。「マンガ」を称しつつ、いくつかのイラストがある程度のシロモノとは違いますよ。


取り上げるテーマも生殖医療に安楽死、クローンなど、ページ数的には深く踏み込めないとしても、なかなか幅広く、妥協のないセレクトと見ます。


しかし、個人的にこの本を取り上げたくなった最大の理由は、ラストの展開。「おいおい、こう来るか」と、結構衝撃的でした。まあ、この記事でわざわざ本書を手に取る人も少ないかもしれないので、ネタバレで言ってしまいますが、主人公である香奈美の幼なじみであり、この本のもう一人の主人公的な存在であった優介が交通事故にあい、脳死状態になってしまうのです。これだけでもショックでしたが、普通この手の作品だと奇跡的に助かったりするはず……と思いきや、結局そのまま亡くなってしまうという……。事故のシーンが描かれないのも逆に、日常に降り掛かってくる悲劇の突然さを感じさせられました。まさかこの本でここまで命の重さを考えさせられるとは……。


中高生から大学生くらいまでにはかなり良いテキストになるんじゃないでしょうか。もちろん、大人が読んでも勉強になります。