さらば涌井

涌井、ロッテ入り「新しい自分見せる」(日刊スポーツ)


相当時間がかかりましたが、結局は当初の予想通りのところに収まりました。ひょっとしてもしかしての残留なんて可能性も考えたんですけどね。やむを得ません。「2年4億4000万円プラス出来高払い」ということは、年俸ベースはほぼ現状維持ということでしょう。その辺が交渉が長引いた原因だったのでしょうか? ともあれ、おかげですっかり覚悟ができてましたから、あらためて寂しいという気もしません。「今までありがとう」というばかりですね。


04年ドラフトで、松坂の後を追うように横浜高校からのドラフト1位入団。2年目に早くも12勝を上げると、3年目には17勝で最多勝と、一気にエースの座に駆け上がりました。ちなみに、巨人移籍の片岡は同期の3位。華のあった2人が抜けて、04年ドラフト組は誰も残らなくなってしまいました(残りは山岸穣星秀和藤原虹気)。寂しいことです。


そんな涌井が一番輝いたのが09年。16勝4敗2.30。11完投4完封という見事な成績で、ダルビッシュを抑えて沢村賞に輝きました。涌井というのは結構ヒットも打たれるし、三振もそれほど取る方ではないのですが、この年はよほどボールが切れていたのでしょう。被安打率も奪三振率も高レベルな数字を残しています。他の年はエースと呼ぶには防御率がちょっと物足りない涌井なのですが、この年の安定感は文句なしにエースでした。


ただ、結果的には……というよりも結果が出る前から予想されたことですが、ここまでの涌井のタフな起用が、その後の彼の野球人生に大きな影を落としているように思われます。150球完投は当たり前、時には160球連続などという無茶投げは、いかに鉄人でも堪えたと見え、その後は成績が低下していきました。それだけが原因とは断言できませんが、いくら何でもあの起用はまずかったのではないかと。僕は今でも渡辺監督の最大の罪は涌井の酷使であると考えているほどです。


去年今年はとうとう先発で結果を出せなくなり、リリーフへ。それでも今年中盤までは、誤魔化し誤魔化し「顔で抑える」という感じでしたが、終盤、それが明らかに変化しました。素人目に見てもはっきり分かるストレートの切れ。終盤は10連投も含め、ほぼ相手打者を寄せ付けない圧倒的な投球を披露。どうも、沢村賞・涌井が戻ってきたような感があるのです。果たしてこれは本物なのか?


もし復活が事実ならば、ロッテは上手い買い物をしたということになるでしょう。個人的にも、「涌井は復活する」と見てます。だから西武にとってはもったいないなと。ま、涌井の方は最初から残留する気がなかったようなのでしょうがありませんけどね。


同リーグですし、来年は何回か対戦もあることでしょう。岸と涌井の投げ合いなんて見てみてみたいものです。もちろん岸が勝つという方向で。