パ・リーグ優位に見るDH制の真価

交流戦終了から4日の休みを挟んで、明日からリーグ戦が再開されます。交流戦の間延び日程はよく批判されるところではありますが、投手の消耗を防ぐという意味では有意義なのかもしれないと思ったりするところ。


さて、その交流戦ですが、パ・リーグの80勝、セ・リーグの60勝(4分)と、今年もパ・リーグ優位の結果に終わりました。勝率にすれば5割7分1厘と4割2分9厘ですから、優勝も狙えるチームと最下位ほどの差がついたと言えるわけです。よく語られているように、交流戦開始後9年間で、8回はパ・リーグが勝ち越し。特にここ4年中3年は勝ち越しが20以上を数えるなど、もはやパ・リーグ優位はちょっとやそっとでは動かせない様相となってきました。一体何がここまで差をつけているのか?


数年前までよく言われたのは、「パ・リーグのエースのレベルが高いから」という解説でした。しかし、ダルビッシュ、岩隈、和田らの姿は今はなく、杉内やホールトンにいたっては巨人に移籍しています。それなのに結果は変わらない(去年はさすがに影響が感じられましたが、それでも勝ち越しでした)。あとは球場の広さとかドラフトの上手さとかが言われていますが、やはりここは両リーグの最大の違いである「DH制」に目を向けてみるべきでしょう。


DH制がアメリカン・リーグで導入されたのは1973年、パ・リーグでの導入が1975年と言いますから、もう40年ほど前の話になります。パ・リーグファンとしては当たり前のように受け入れてきましたが、考えて見ればかなり大胆な制度で、野球というスポーツにおける最後の大改革と言われるのも頷けます。


「投手の代わりに指名打者が入る」。これによって何が変わるかといえば、端的に攻撃力が上がるわけです。ほぼ期待できない打者が期待できる打者に変わるわけですから、9分の1。ざっくり10%くらいは攻撃力がアップするということになるでしょう。となれば当然、投手の方もその攻撃を抑えるべく、レベルアップしなくてはなりません。これもよく言われるように、代打で交代させられることがないというのも大きいですね。


そしてもうひとつ、「野手の出場機会が増える」という面も見落としてはなりません。いかに代打が出されやすいとはいえ、セ・リーグでは投手が合計でかなりの打席に入っていることでしょう。パ・リーグではその分をまるまる野手の出場に当てることができます。育成にはなんといっても実戦での経験が一番。つまり、育成という観点で見ても、DH制では10%ほどの底上げが見込まれるわけです。


こうして考えてくると、むしろパ・リーグ交流戦で勝つのは当たり前という風にも思えてきました。現に、MLBでもDH制のア・リーグナ・リーグを圧倒していると聞きます。古き良き野球の精神である「9人の戦い」を体現するセ・リーグの見解も嫌いではないのですが、このままでは、パ・リーグの壁を跳ね返すのに相当苦労することになるのではないでしょうか。