「世界記録はどこまで伸びるのか」

世界記録はどこまで伸びるのか

世界記録はどこまで伸びるのか

2008年の北京オリンピック。100メートル走で世界新記録を出したウサイン・ボルトの登場は衝撃的でした。ボルトは翌2009年にも、さらに自己記録を大きく塗り替える9秒58をマーク。これが現在に至るまで世界記録となっています。こうなると気になるのが、「人類はどこまで速くなれるのか」ということ。ボルトがさらに記録を伸ばすのか。あるいは他に天才的選手が現れるのか。興味は尽きません。7秒や8秒というのは、人類が別種族にでもならない限りありえないでしょうが、では9秒3ならどうか、9秒2はいけるのか……?


本書は、まさにこうした人類の記録の限界について、出来るだけの理論的考察を元に「究極の数字」を提示しようという意欲的な一冊です。100メートル走はもとより、マラソン、水泳、さらにはゴルフや野球の飛距離まで、様々な項目について、妙に凝った架空のストーリーも交えて追求。著者はTVプロデューサーであって運動の専門家ではないため、科学的に厳密なものではないかもしれませんが、十分に面白い内容でした。


野球の章でいうと、最強のバッターが無風のクアーズ・フィールドで最高の速球(178キロ!)を理想的に弾き返した場合、228メートルを記録すると算出しています。この数字もすごいですが、ここで語られる野球の打撃技術のとんでもない難しさには、あらためてプロ選手に対する敬意がわきますね。0.4秒で飛んでくるボールを打ち返すというのは神業レベルであることを再認識でした。