「さっさと不況を終わらせろ」

さっさと不況を終わらせろ

さっさと不況を終わらせろ

とうとうノーベル賞まで受賞までしてしまった(と言ってもちょっと前ですが)クルーグマン氏の、低迷続ける世界経済に活を入れる一冊。


本書における著者の主張は極めてシンプルであり「財政支出で景気を回復させろ」の一言につきてしまいます。現在のような不況時に支出削減や増税は愚かであり、政府による財政支出こそが最良の方法であると。そしてこの主張を裏付けるべく、アメリカを中心にした古今の事例を示し、返す刀で「政府は市場に介入すべきではない」「財政赤字を増やすべきではない」という財政保守主義者を批判します。


クルーグマン氏からすれば、日本の消費税増税は悪手であり、一方、安倍首相の掲げている財政政策は良策と評価されそうですね(追記:本当にされてました)。


ただどうなんでしょう。日本はバブル崩壊以来、繰り返し財政支出を行なってきた気がするのですが、たとえ効果があったとしてもそれは一時的な底上げにとどまり、結局赤字が積み重なるだけで終わるのではないかという疑問はあります。日本の流動性の罠について紹介するのでしたら、その辺についても解説してもらいたかったところ。


翻訳はおなじみ山形浩生さんで、こちらもすっかり「クルーグマンといえば山形調」というイメージになっています。もっとも、訳者によるとこれでも、偉くなったクルーグマン氏に合わせて、多少は文章を固くしたそうではありますが。