「ジャック・ウェルチ わが経営」

ジャック・ウェルチ わが経営 <上>

ジャック・ウェルチ わが経営 <上>

ジャック・ウェルチ わが経営 <下>

ジャック・ウェルチ わが経営 <下>

GE(ゼネラル・エレクトリック)は、かのエジソンに端を発するアメリカの名門企業にして、世界最大級のコングロマリット。本書は、90年代にGE中興の祖として名を馳せた名CEOの自伝になります。


彼、ウェルチが新CEOに指名されてから、いかにしてGEを改革し、一段と強力な企業へと刷新していったか。こう書くと難しそうな本に思われるかもしれませんが、さにあらず。中身はウェルチの人柄を反映してか、意外なほどに親しみやすく読みやすいものになっています。それでいて、彼が行った改革の芯が伝わってくる。読み応えがありました。


大企業にありがちな官僚的精神を徹底的に嫌い、人材を重視して能力ある人物を登用し、柔軟かつパワフルな精神を広めていくウェルチ。競争力がないと見るや、伝統のエアコン部門も売り払い、反面でケーブルテレビや金融を買収して業種を広げていく。かといって冷徹な儲け主義一辺倒というわけではなく、「誠実」をモットーにすべての事柄に立ち向かう。


実際のところはどうだか分かりませんが、本書で書かれたGEは、やる気にあふれた優秀な人材が、会社と自身の成長、そして社会貢献のために全力を尽くして働いているというイメージでした。これは生半可な他社がかなわないわけです。


ただ、優秀な人材を揃えるということは、凡才非才は切られてしまうということでもあります。上で書いたエアコン部門のように、愛着のある会社の顔的な部門でも業績次第ではきっぱりと切られる。ウェルチ自身も、その決断の辛さには触れていますが、結果的にはその人のためになる、ともしています。会社の成長のためには当然なのかもしれませんが、ついていけない人には辛いかもなあ、などと思ったりもしました。


本書の終盤はウェルチの後継者選びに大きく紙幅を割いています。候補がみな優秀すぎて選べないという贅沢な悩みの末に、ジェフリー・イメルトを後継者に選択したあたりで本書は終了していますが、その後12年、イメルトは順調にGEを切り盛りしているようです(さすがにリーマン・ショックでは苦戦したようですが)。名経営者にとってある意味一番の難事といえる後継者選びまで成功させるとは、スキが無いですなあ。


それにしても、以前ドラッカーの本を読んだ時も感じたことですが、本当に優秀な人というのは、声高に語らないでもその優秀さが行間から伝わってくるものです。「才能のある人を評価する」なんて当たり前のように書いてありますが、それを見極めるのだって本当は大難題のはずなんですけどね。簡単そうに書いてあっても真似はできないだろうなと思わされます。