「十字軍物語」

十字軍物語〈1〉

十字軍物語〈1〉

十字軍物語2

十字軍物語2

十字軍物語〈3〉

十字軍物語〈3〉

十字軍。特に昨今のアメリカとイスラム原理主義勢力との対立関係とかの中でわりとよく聞く単語ではありますが、僕はこれまで詳しくは知りませんでした。「なんか中世にヨーロッパの人達が信仰心でエルサレムあたりに攻めていったんでしょ」くらいのぼんやりとした認識で。


そこで本書です。「ローマ人の物語」以来愛読している塩野七生さんの新刊とあらば、読みごこちに不安なし。実際、大変面白く分かりやすく、3巻などは1日で一気に読んでしまいましたよ。


知らなかったことがたくさんありましたね。十字軍といっても闇雲に狂信で突き進んでいったわけではなく、もちろん信仰はベースにあったとはいえ、キリスト教側にもなかなかの名将がいて、現実的な戦略戦術を駆使していたこと。そして、一時的(と言っても100年近く)で目標のエルサレム奪還を果たしていたこと。十字軍自体は間欠的にしか派遣がなかったので、十字軍国家は慢性的に兵力不足だったこと。常に戦争していたわけではなく、むしろイスラム側との平和共存期間も長かったことなど。勉強になります。


読む前は、なんで行った先で勝手にエルサレム王国だのアンティオキア公国だの勝手に自分の国を作ってるのか、母国とかローマ教皇とかの領土にするものじゃないの? などと思っていたのですが、読んでみると、そうなるのが当然というふうに思えてきますね。


カッコ良かったのはリチャード獅子心王。まあ、カエサルのように塩野先生の贔屓が入っているのかも知れませぬが、獅子心王なんて二つ名が残っているくらいですから、やっぱりすごかったんでしょう。


ラスト。十字軍国家に残された最後の街、アッコンをめぐっての攻防戦は熱くも悲しいです。いつの時代も、人はなぜ殺しあわねばならないのか、と思わされます。