「ブッダ―伝統的釈迦像の虚構と真実」

コンパクトで画像もたくさん。それでいてブッダについて密度濃く読みやすくまとめられた一冊。ブッダの生涯をダイジェストで追った部分もなかなか面白かったですが、このへんは有名なところなので置いときまして、より興味深かったのは、本書の序章にあたる「ブッダ観の移り変わり」という部分。


そもそもゴータマ・ブッダことお釈迦様が人間であったことは明らかであって、彼が説いた教えは、あくまで人間的なものであったことは想像に難くありません。しかしながら、ブッダの死後、その存在は次第に神格化、神秘化され、過去仏とか前生物語とか、色々と(現代の目から見ると)胡散臭い話になっていきます。弥勒菩薩という名前は有名ですが、彼(?)は56億7000万年後に地上で仏となって人々を救うとか。なんだか頭がクラクラしてきますね。


問題は、こうした後付け的な世界観を背景に持つ、いわゆる大乗仏教が、どれだけ本来のブッダの教えであるかということです。日本に伝わった仏教は大乗仏教で、念仏とか禅とか色々ありますが、著者は、大乗仏教は仏教ではない、と明解に指摘します(大乗非仏説というやつですね)。さらに、大乗仏教で仏になった人はいない、とも。刺激的です。


まあでも、多少とも仏教入門本とかを読む程度でも、実際そのあたりは引っかかるところで、色々話や宗派がありすぎて、ブッダが説いたものとはズレてるんじゃないの? という疑問は出てくるわけです。大乗仏教もこれまで偉い人達がたくさん修行して受け継いできたのですから、智慧も効能もあるのでしょうけど、もはや「仏教ではない何か」なのかもしれないですね。このへんは、もうちょっと勉強してみたいところです。