「若き将軍の朝鮮戦争」

若き将軍の朝鮮戦争 - 白善ヨップ回顧録

若き将軍の朝鮮戦争 - 白善ヨップ回顧録

1950年に勃発した朝鮮戦争。それから60年来、朝鮮半島は分断されたままとなり、特に北朝鮮の動向は現在の日本、ひいては国際情勢に大きな影響を与えています。


本書は、当時若き指揮官として戦争を戦いぬいた韓国将軍の半生記。軍事の現場の感覚と、戦争の実態を伝えてくれる一級資料として、もちろん読み物としてもグイグイ引き込まれる力作長編でした。


文章の大半は当然戦争について割かれているものの、著者が若き日を過ごした日本統治時代、さらに、韓国の要人として国の発展に尽くした後年についても触れられ、密度の濃いものとなっています。特に、日本統治時代についての冷静な観察と評価は日本人として興味深いところ。感情的に非難するのではなく、日本の事情も慮りながら、そうは言っても、当時の日本政府や日本軍が抱えていた差別性や無責任体制といった問題点を鋭く指摘しています。


戦争については、北からの侵攻で押し込まれた韓国・国連軍が釜山橋頭堡で踏みとどまり、反撃北上。今度は中国国境付近で中国「義勇軍」に押されて後退。結果38度線で停戦というおおまかな流れは知っていたものの、細かく見るとそれぞれの場面で緊迫のドラマがありますね。完全敗北も完全勝利も紙一重のところで実現しなかったところに、歴史の深みと偶然性というものを感じてしまいます。


それにしても、わずか30歳で師団長、33歳で参謀総長とは。それに伴う実力と功績があったとはいえ、銀英伝のヤンもびっくりです。90歳を過ぎた今もご健在なようで、まさに歴史の生き字引とも言える方ですね。