「ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?」

ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?

ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?

世はゴールデンウィーク真っ盛り。旅行もゲームも読書も良いでしょうが、もしかしたら一番大事なのは「よく寝ること」かもしれません。普段溜まっている睡眠不足を解消することが、人生においてどれだけ重要なことか、本書を読むとよく分かります。


著者のウィリアム・C・デメント氏はなんでも睡眠学界の権威だとか。睡眠学に詳しくない人でも、「レム睡眠」という言葉は知っているはず。そのレム睡眠の名付け親が著者だというのですから驚きです。権威というと、なんだかとっつきにくくて堅苦しいイメージになってしまいますが、本書の語り口はソフトで、非常にわかりやすく眠りについて解説してくれます。


いわば睡眠不足の借金である「睡眠負債」が、少なくとも2週間分は累積されることですとか、日本でもJR西日本脱線事故で知られるようになった睡眠時無呼吸症候群の恐ろしさですとか。日々の不機嫌、無気力から、数々の交通事故まで、現代的な24時間生活の中で積もった睡眠負債のために、人々がどれだけの損失をこうむり、社会を危険にしているのかと痛感させられます。


最近では関越自動車道のバス事故でも、運転手が「居眠りをしていた」と話しているようです。まさに、睡眠不足は自分も他人も傷つけてしまう可能性がある状態なのです。「飲酒運転が罰せられるのなら、睡眠不足運転も罰せられるべきではないか?」そんなことも思わせてくれる話です。


以前から思っていたことなのではありますが、本書を読んであらためて思いました。


「日本(というか世界中ですが)は、十分眠れる国になるべきだ!」


実際、政治家でも官僚でも医者でもサラリーマンでも、睡眠不足で良い判断ができるはずないと思うんですよねえ。むしろ効率低下は必至。睡眠時間をしっかりとったほうが国のためにも国民ひとりひとりのためにも結局のところはプラスだろうと。日本経済復活のための議論は雑誌でも新聞でもネットでも山のように語られていますが、どうもこの点を強くアピールしたものを見かけないのが残念であります。


なお、デメント先生は「睡眠時間が短くすむ方法はない」と明言してくれちゃっています。世の中には「短眠法」なんてフレーズが出まわってますが、鵜呑みにしないほうがよさそうです。というか、仮に信じたとしてもキツくてできそうにないです。僕は素直に8時間以上睡眠を目指すことにいたします。