アイドルマスター 第23話「私」

今回はせつなく、物悲しいエピソードでした。全員でライブの練習をしようと奮闘する春香が、健気でもあり、少々痛々しくもありましたね。


別に誰も練習をサボろうとか、春香を嫌っているとかいうわけではなく、むしろできるだけ協力しようと思っている。それでも過密スケジュールの中でうまくいかないという。それが次第に春香を落ち込ませていきます。


こういう重い話は、ややもすると暗い展開一辺倒になって逆に嘘っぽくなってしまうものですが、今回はところどころ和んだり、希望を持てるシーンも含めておいて、なだらかに重くしていったところが上手いと感じました。


また、2クールかけてきただけあって、こうしたドラマに耐えうるだけのキャラクターが確立していますね。「ああ、春香だったらこうして抱え込んでいきそうだな」と感情移入できました。明るくて、前向きで、良い子なんですが、それだけに弱音や愚痴を吐けずに苦しむ春香。笑顔もどこか物悲しいです。


思うに、今の彼女には、目標が見えなくなってしまっているのではないでしょうか。アイドルとして大勢の人の前で歌いたいという願いが一応叶って、いつしか、仲間と楽しくやっていくことばかりが優先順位になってしまったのではないかと。もちろん、仲間思いは悪いことではないですが、一番の目標はなんなのか、ということが抜け落ちると危ういです。


その対比が鋭く示されたのがミュージカルでの美希の言葉でしょう。主役を争うライバルであれば、友達であっても「一緒に頑張ろう」はおかしい。美希の指摘はもっともでした。さらに言うと、冒頭で春香が見ている雑誌やCM等で出ているのは、765プロの「他のメンバー」なんですよね。春香自身じゃなくて。それを喜べるのが春香の優しさであると同時に、アイドルとしての野心の弱さにも見えます。


サブタイトルの「私」は、春香がプロデューサーに話しかけようとした言葉でもありました。彼女が言おうとしていたのはどんなことだったのでしょうか? いずれにせよ、プロデューサーの事故で彼女の心はさらに傷つくこととなってしまいました。なんとか再び元気になってくれることを願いつつ、次回を待ちます。



ところで、今回は短いながらも雪歩の見せ場がありましたね。あれだけ恥ずかしがり屋だったのに堂々とセンターをつとめて、彼女の成長ぶりがうかがわれました。