「とある飛空士への恋歌 1〜4」

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)


同作者の「とある飛空士への追憶」が傑作だったので、逆にこちらには手を出しがたかったのですが、読み始めると止まりませんでした。「追憶」ほどではないにしろ、やっぱり面白い。革命で追われた元皇子と、革命の象徴となった少女の恋物語。せつなく厳しく温かいロマンに、胸がワクワクキュンキュンであり、物語を読む楽しさを存分に味あわせてくれました。


「追憶」が「ローマの休日」&「大空のサムライ」なら、こっちは「ロミオとジュリエット」ですかねえ(と思ったら、実際作者がそう言っているらしいです)。あとはフランス革命とかコロンブスとか、わりと話のモデルが分かりやすい作者さんではあります。個人的には「アリソンとリリア」も思い出したり。


さて、以下ややネタバレしつつ。


本作はカルエルの成長物語であると同時に、クレアにとってのそれでもあるのですね。彼女はヒロインであると同時にもう一人の主人公でもあって、その二人をアリエルとルイス提督が支える構図。その点で言うと、アリエルは最初から完成されてて、お話的にはありがたい存在かと。彼女がいなければ、カルとクレアはどうなっていたことやら。


クレアに戻ると、可愛くて強くて純真な子ですが「なにも悪いことをしていないわたし(2巻175P)」という自己認識が少しだけ引っかかったり。いや、風で近衛空挺兵団を落としてるじゃないですかと。もっとも、あれは革命のためのやむを得ない犠牲という言い方も出来ますし、別の場面では「自分の罪深さ」を感じてますので、あの場面では彼女自身動揺してて、自己正当化したかったのかもですが。


そして3・4巻の激闘。学生達の勇気と行動は確かに感動的であり、賞賛されるべき働きだったかもしれません。しかし、それは果たして正しいことだったのかと、考えさせられもしました。むしろ、学生出陣の命令に反対したソニア先生のほうにこそ共感があります。僕だったらバスに残ったかも。いずれにせよ、難しい選択です。


あと、空族がこれまでのところ一方的に悪者としてのみ書かれていて、彼らの人間的な部分は省かれてますね。その辺書き出すと複雑になっちゃうのは分かるんですが……。最終巻ではまともな登場があるでしょうか?


前作「追憶」のファナが名前だけですが登場するのも嬉しいところ。彼女はカルロ皇子とうまくやってるんでしょうか? また、「海猫さん」がシャルルだとすると、彼はその後またファナの元で働いてるってことになりますね。ま、この辺はある程度パラレル的な受け止め方の方が良いかな。


とにもかくにも、次で最後らしいので、心待ちです。