「さよならピアノソナタ」

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈3〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈3〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)


良い物語は、良い音楽と同様に余韻を残し、心の中に響いていくものです。感動とともに、その世界と分かれることに対する切なさが身にしみる。本作も、そんな物狂おしいような感触を僕に残してくれました。さすがに評判のシリーズでしたよ。


とにかく、真冬が可愛らしい。これはイラストの植田亮さんの力も存分にありますが、第1巻を読んだ限りではさほど好感を持てたわけではなかったので、やはり著者の筆力によるところ大でしょう。


この物語は直巳の成長物語なんですが、同時に真冬のそれでもあるんですね。彼女は容姿端麗でピアノはプロ級ならぬプロで、おまけにギターもこなしますが、それでも欠点や弱さも多くて、悩み苦しんでいる。直巳が意気地無しと言われるように、真冬もやっぱり意気地無しで、似たもの同士でした。


そんな二人を先輩と千晶が支え、引っ張る構造だったと言えるかもしれません。それと、あくまで脇の存在でしたが、とっつきの悪い真冬を受け入れたクラスメートの皆さんも、今作を温かくする存在でした。いじめなんて無くて良かった。


読み終えて、冒頭に記したように、一抹の寂しさがあります。しかし、作者ですら後書きで書いているように、彼らの未来をただ祈るしかないのです。読者としても、これから直巳と真冬が互いのために、そして仲間のために少しずつでも勇気を出して、幸せに歩いて行ってほしいと、切に願います。もちろん、先輩も千晶にもそのほかのキャラにも、幸多からんことを。