「ハローサマー、グッドバイ」

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

♪もし僕の願い 星へ届くなら〜
    永遠のあの夏 もう一度〜



表紙を見たとたん、頭の中に「ロケットの夏」エンディングテーマ「Hello Summer,Goodbye」が流れたので、手に取りましたこの一冊。歌のタイトルに使われるということは、スタッフの思いいれもたっぷり、つまり名作ということに違いないとの確信です。第一、表紙の少女、ブラウンアイズがキュート。これはもう読むしか。


舞台はこことは別の世界、別の星、別の生態系。とはいっても主人公達は寒さに極端な恐怖を示す以外は地球の人間と変わらない模様で、この辺は深く考えず、「そういうものだ」と思って読みます。主人公のドローヴは最初はひねくれ気味の少年像で感情移入しにくかったのですが、それでも曲がったことは嫌いで、何よりブラウンアイズへの想いが純情なので根の善良さを感じさせてくれますね。


そのブラウンアイズ。彼女もまた可愛い。この物語の魅力の7割はブラウンアイズによると言えましょう。で、残り1割がリボンで2割がラスト。最後の最後まで見えない物語の終着点が、わずかにラスト数ページで急展開して読者は呆然として本書を置くことになるのです。といいますか、正直理解しきってないんですけどね、僕。まさに急転直下。


脇役も、一見すると悪っぽかったり小者っぽかったりしても、単純にそれだけでは無い様に書かれている、ように見えます。役人は悪役ですが、メストラー氏は良い味を出していますし、最初は嫌な女の子に見えたリボンもいろいろな面を見せてくれます。



それにしても、冒頭紹介の歌詞は、本書を読んでから見返すと異常にぴったりで、ゲームよりもむしろ本作のために作られたのかと思いました。まあ、歌詞には海は出てこないんですけどね。