「空ノ鐘の響く惑星で 1〜12」

空ノ鐘の響く惑星で (電撃文庫)

空ノ鐘の響く惑星で (電撃文庫)

空ノ鐘の響く惑星で〈12〉 (電撃文庫)

空ノ鐘の響く惑星で〈12〉 (電撃文庫)


面白かった〜。久々にライトノベル長編を堪能しました。「早く続きが読みたい! でも終わってほしくない」という、良作につきもののジレンマに悩まされつつほとんど一気読み。満足です。


物語はこことは違った世界、違った大陸を舞台にした、ほぼ正統派ファンタジーもの。異世界からの”訪問者”達が現れて、歴史は大きく動くことになるのです。


……ダメだ、これじゃ全然面白そうに紹介できてない! う〜ん、どうしたものか。じゃああれだ、デルフィニア戦記電撃文庫にした感じって言い方でどうでしょうか? デルフィニア戦記知らないと通じないでしょうけどね。


とにかく本シリーズの魅力は多彩な登場人物です。なかでもリセリナとウルク! この二人のヒロインこそが、一応主人公のフェリオ王子を置いて、実質的な主人公といっても過言ではないでしょう。抜群の戦闘能力と健気な心をあわせもつ、訪問者のリセリナ。フェリオの幼なじみにして、優しさと頭の良さが印象的なウルク。フェリオをめぐる三角関係がまず一つの物語の軸となりますが、二人とも穏やかな性格なのでギスギスするわけでもなく、さりとて互いに嫉妬を覚えないほど無邪気でもなく、恋敵にして友人という微妙なスタンスがたまりません。


あとはパンプキン。フェリオやイリスやシアを差し置いてもパンプキン。パンプキンあってこその今作です。最初はここまで輝くキャラになるとはとても思っていませんでしたよ。


そして物語のもう一つの軸は、世界をめぐる謎と国々の攻防。各所にそびえ浮く御柱(ピラー) とはなんなのか。鳴り響く空ノ鐘の意味とは? そして世界の命運は? 戦記物としてはちょっと見せ場が少ないところもあるのですが、ここら辺のSF的魅力も十分でした。


さて、以下ラスト感想反転



大団円。


まあ、ちょっと甘いといえば甘いとは思います。フェリオたちはともかく、イリスやエンジュやアンジェリカが普通に助かってますし。でもこれでよいのでしょう、多分。パンプキンが無事だったらしいのが何より嬉しいです。悪役のシズヤ達も行き乗っていて、ある意味バランスが取れてますし。


結局フェリオはウルクとリセリナの二人と結婚することになりました。こういう選択は結構珍しいような気がいたします。王族設定だからこそ許される結論ともいえますが、フェリオのことだから、そしてウルクとリセリナのことだから、十分に考えて3人で納得した末の結論だったのでしょう。正直、最後の頃はウルクが押しているように見えましたから、フェリオがリセリナも選んだのはちょっと意外でもあり、でも嬉しくもありましたね。これまでの積み重ねがあるから、そんじょそこらのハーレム物とは説得力が違います。3人の日々を色々想像して、ニヤニヤしてしまいますよ。


ちょっと残念なのは、リセリナたちの”訪問者”という特性が、戦闘力以外に生かされなかったところですかね。もうちょっと彼女たちの知識、カルチャーギャップが描かれても面白かったと思います。


最後は意外にもシアで締め。でも、フェリオやウルクやリセリナよりも年下な彼女だからこそ、時の流れと、一種世界を外から眺めているような感傷が、出ていたようにも思います。感無量でした。



最後に一言。


渡瀬先生、すみません、全部図書館で借りちゃいました!


売り上げ貢献しなくて申し訳なく思っております。せめてこの場を借りて今作を推薦なのです。