ef - a tale of memories. 第8話「clear colour」
千尋、リセットしてしまったのね……。
今まででも十分に良作だったefですが、今回で暫定的ながら名作にステップアップしました。少なくとも僕にとっては。ここまで記憶障害の悲劇と重さをしっかりと描き、見せてくれるとは驚きでした。多少の問題はあっても、これまで千尋は千尋として、十分に理性的に物事に立ち向かえているように見えました。でもそれは前日の思い返した記憶がおぼろげに残っていたから。「自分は記憶を持たない」という認識を睡眠をはさんでも何とか維持していたからだったのですね。その「思い返すことによる擬似的な長期記憶」を、より広げようと努力したことで発生してしまった破滅。
そうですよねえ、12歳のときから目覚めてみたらいきなり自分の体も、場所も変わっていたら、それは絶対にパニックですよねえ。眼帯があれば外したくなりますよねえ。嗚呼……。彼女が生きる限り何度となく訪れるのであろう絶望に思いをはせます。
千尋は一応日記を読んで状況を理解することはできるかもしれません。でも、今まで蓮治と過ごした日々の記憶は、その欠片さえも残らず霧消してしまいました。なんだか、綾波レイを思い出しましたよ。いや、外見が近いということじゃなくて、一見本人のようでも記憶が残らないという点で。ある意味、今までこの作品で生きていた千尋は死んだ、のかもしれません。
……景や紘が、千尋のことを忘れてはいないにしても、直接会いに行かない理由が分かったような気がします。蓮治は、これからどうするのでしょうか。
濃厚だった千尋パートですが、みやこ・景パートも面白かったです。景のしたことは最悪ですが、それでも紘や京介といる彼女はいつものように元気でした。みやこを追い払って、ドアの内側でへたりこむ姿は、彼女の精一杯の虚勢であったことを示していて、単純に悪役ではない描き方がされていると思います。
とはいえ、景のやったことはやっぱりひどかったので、最後にみやこの電話がつながったことは今回最大の救いでした。
「あたしまだ、消えてなかったんだ」
大きく揺れる彼女達とは異なり、紘が当初の想像以上に安定した人物であるのが頼もしいです。