「喪男の哲学史」

喪男の哲学史 (現代新書ピース)

喪男の哲学史 (現代新書ピース)

立ち読み流し読みですが「相変わらずすごい本を書くなあ」と半ば感嘆、半ば苦笑でありました。古今の哲学史を全て喪男とモテ、現実と萌えの世界に当てはめ、なおかつ一定の説得力を持たせているというのは著者の力量のなせる業でありましょう。少なくとも、哲学者の主張をただ紹介するだけのような哲学史本とは一味も二味も違います。本書は「自らが考え抜いた思想」という哲学の基本が確かに備わっているように感じられました。「事実関係に間違いも多い」という批判もあるようですが、まあそこはそれ。「間違って哲学書のコーナーに置かれてしまう」などと言わず、堂々哲学書を名乗っても良いのではないでしょうか。個人的に、プラトンイデア論と萌えキャラを結びつけた節にはちょっと本気で感動いたしましたよ。


……ただ、一点さびしく感じられるのは「この本も『電波男』同様、狭い範囲の内輪ウケで終わってしまうんだろうな」ということ。力作であるだけに、世に広く読まれてほしいという気もするのですが、なにぶんこれだけ文中にオタクネタが詰め込まれているのでは難しいと予想せざるを得ません。論壇とかで取り上げられても良いと思うんですけど(朝日新聞香山リカさんの書評は良かったですが、さて、あれを見て買おうと思った新聞読者がどれだけいますかね)。