「萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか」
萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか
- 作者: 堀淵清治
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2006/08/14
- メディア: 単行本
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最近ちょっと話題の書。あくまでアメリカマンガ業界に対する挑戦談を書いた本なのでタイトルには相当偽りありですが、著者の彼の地での苦闘成功物語として、十分に面白かったです。ディープなオタクというわけでもなく、さりとてバリバリのビジネスマンというわけでもない。カリフォルニアのカウンターカルチャーにハマッて大学飛び出し移住してしまったという経歴の著者だからこそ、アメリカでマンガを売るというビジネスにバランス感覚をもって挑めたのかもしれません。バイタリティのある人というのは世の中にいるものだなあ、と感嘆するとともに、自分も努力して少しでもパワフルに頑張っていきたいものだ、と思わされもしました。……ま、人それぞれ性分があるのはもちろんとしてもですが。
話を本書の内容に戻して。ポケモンブームに乗って成長したアメリカマンガ産業において、著者の経営していたビズ社は「SHONEN JUMP」やグラフィックノベルを発売していきます。まずはアメコミ形式で「郷に入って」発信しつつ、次第に日本式の単行本、さらに右から左へ進むコマ割りまで導入していくあたりが素晴らしい。最初から日本式でやろうとしても失敗したでしょうし、かといっていつまでも左右反転では面白くないですしね。
異国の地だけに、流通方法一つとっても日本と仕組みが異なり、ノウハウの吸収と、各社への食い込みをしていかねばならない。当たり前のことですが、「本の販売」と一言で言っても、外国ではなかなか簡単にはいかないということが伝わってきました。ただ、そのあたりの描写は最小限でさらりとかかれており、本格的なビジネス本とは違うかも。
日本人として、マンガが世界でもっと広まって欲しいと思うとともに、著者が最後に書いていた「マンガのような文化を生み出すおおらかさ」は今の日本で失われつつあるのではないか、とちょっと危惧を感じたりもいたしました。