「クルーグマン教授の経済入門」

クルーグマン教授の経済入門

クルーグマン教授の経済入門

おなじみクルーグマン教授の著書を山形浩生さんがザクザクと翻訳した一品です。盛りだくさんな内容もさることながら、山形さんの訳文が非常にこなれているというかくだけているというか、まあいつもの山形さん調なのが特徴的。訳者あとがきによるとこれはクルーグマン教授の原文のニュアンスを出来るだけ伝えた形であるそうで。たしかに著書の本はたとえ「ガチガチの学者訳」であっても読みやすい印象があるので、原文は相当に柔らかいんだろうなあと思いますが、面白い反面、ちょっとクセが強くて鼻につく気がしないでもありません。


まあそれはともかく内容は盛りだくさん。生産性、貿易、ファイナンス等々、著者が語るとどれも非常に簡単なことのようにスッキリとしてきて、面白い反面「本当にこんな分かりやすい話なのだろうか?」と眉につばをつけたくもなってしまうのですが、それはそれとしまして。


惜しむらくは、この手の本の宿命として書かれた時期から翻訳出版されるまでに鮮度を失い、なおかつそれから8年後(汗)に読んだということでしょうか。その分結果論的に見られるので、M&A等のファイナンス話が今後の日本に必要になるだろうと入れられたあたりは慧眼だなあと思わされますが。