「硫黄島からの手紙」

先週見た「父親たちの星条旗」に続き、今週はこちらを鑑賞。やはり二部作だけあって両方見るべきだと思いましたね。倒れていくアメリカ兵の中にフランクリンやマイクがいたかと思うと、戦争のわびしさとむなしさが一層募ります。


初めから勝ち目の無い戦い。「御国のため」と言いつつも、一体何のために死んでいくのか。栗林中将が「本土の人々の平和を1日でも伸ばせば意味がある」と言う、それも一つの納得の仕方とはいえ、もはや戦争遂行能力無しの大本営の体たらくぶりが伝わるだけに悲しいです。


そして「父親たちの〜」でも見せつけられた戦争状態心理の恐ろしさは今作でもたっぷり描かれていました。まかりとおる体罰に私刑、半強要の(本当に怖く描かれていた)集団自殺。さらには独善的な軍紀無視。アメリカ軍も降伏した捕虜を「面倒だから」という理由で虐殺し、日本本土では憲兵特高?)がたかだか鳴き声を理由に犬を殺す。あまりにギスギスしていて逃げ出したくなります。特に召集令状を持ってきたところの愛国婦人会のおばさんの言葉が印象的でした。「自分達も夫や息子を戦地に送っている」 彼女も犠牲者なのです。だからこそ「他人も同様の犠牲を払うべきだ」となるわけですね。愛国の言葉を冠した犠牲の強制化システムとでも言えましょうか。こういうのを見ると、「個人主義は大事だ」と思いたくなります。


西郷はじめいくつかの兵士の言動が現代的な感もちょっとありましたが、それも「もしかしたら実際にはそんなくらいだったのかもしれないな」と思わせ、見るほうを作品内に感情移入させる役割を担っていると感じました。


二部作ともさすがイーストウッド監督の名作だと思います。できれば日本人には「父親たちの星条旗」の方も、そしてアメリカ人にはこの「硫黄島からの手紙」も見て欲しいですね。