「暗号解読」
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/07/31
- メディア: 単行本
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「長門有希嬢が読んでいたから」という非常にミーハーな理由で手にとって見たのですが、いやこれはすごい。めちゃくちゃ面白いですよ? もともとこういうサイエンス一般書に弱いこともあって、巻を置くあたわずの勢いで読みました。おかげで寝不足。
歴史上、長年にわたって続けられてきた暗号作成と解読の戦い。筆者は平易な筆致で実に興味深く読ませてくれます。「解読不可能」と言われた暗号が人々の努力の元、一つ一つ破られていくのには素晴らしい知的興奮を感じました。大げさなようですが、人類の知恵を見直すことになる一冊でしたよ。
近代になって暗号の戦いは拡大します。よくコンピュータ界隈で名前を聞く公開鍵と秘密鍵の概念も、本書を読んでようやく理解できました。「誰でも南京錠をかけられるが、開けられるのは鍵を持っている者だけ」みたいな感じですが、理解するとこれが暗号における革命的発想であったことが良く分かります。考え出した人はすごすぎる。
現在はそのRSA暗号によってほぼ確実な暗号化が可能となり、暗号作成者側の勝利となっているところみたいです。ネットの通販ページなんかで出てくるSSLというのもこれを使っているのですね。しかし量子コンピュータが出来ればその座は脅かされるかも? さらに対抗して量子暗号も考慮済み? めまぐるしく情勢は変わり、本書発売後5年以上が経過した現在ではどうなっていることやら。量子論といえば確率論で有名ですが、確率でしか決定していないものを使えば確かに完全な暗号化が出来そうで、これまた発想のすごさにうならされました。さて、実用の日が来ますか? そもそも量子コンピュータは出来るのか? 気になるところです。