新庄剛志について

日経新聞の豊田泰光さんのコラムで、引退を発表した新庄について触れられていました。うなずくところが多かったです。新庄はまさにプロ野球界のトリックスター、稀有な魅力を持った選手でありました。まあ、まだ過去形にするには早いんですけど。

プロで一軍レギュラーになるような選手は、他の面はそれぞれとしても、こと野球に関してはみな真面目なものだと思います。そうでないととても活躍なんて出来ないでしょう。ですがそれゆえに、野球一筋で視野が狭くなってしまうとも言えます。

その点新庄は異例でした。野球に不真面目とは言いませんが、どこか相対的なとらえかた。「ムービースターになる」「モデルになる」「センスが無いからやめる」といった数々のコメントがそれを示しています。野球と適度に距離を置いているからこそ、普通では考えられないような素晴らしいパフォーマンスを見せる。もしかしたらファンはこの逆説に魅了されたのかもしれません。僕は長嶋さんの現役時代は知りませんが、長嶋後もっとも長嶋的選手であったのは、清原でも松井秀でもなく、新庄剛志なのだろうなと思います。

聞くところによると、新庄は開幕戦、札幌ドームの満員を見て引退を決意したとの由。阪神でもメジャーでもプレイした彼ですが、その実力と人気がもっとも有効に発揮されたのは結局ファイターズ時代だったということなのでしょう。「これからは、パリーグです」は、新庄だからこそ言えた、時代と新庄がシンクロしたかのような名ゼリフでした。

球団は当然慰留することでしょうが、おそらく今回の決意がひっくり返ることは無いと思います。野球ファンとして残念なのは確かですが、新庄らしさを完結させるためにも、ここは花道を飾らせてあげたいですね。そして願います。次代の新庄よ、出でよ！　と。