「本居宣長とは誰か」

本居宣長とは誰か (平凡社新書)

本居宣長とは誰か (平凡社新書)

本居宣長といえば江戸時代の国学者古事記の研究で名高く、賀茂真淵と出あったエピソードは有名。……くらいの知識だったのですが、この本のおかげでもうちょっと詳しくなりました。
ひたすらに漢意(からごころ)を排斥しようと欲し、皇国日本の優秀性にこだわる宣長。その姿は少し異様にさえ感じられるものがあります。本書に紹介されている上田秋成との論争が面白い。「古事記だ、神国だといっても、他国に行けば他国なりの神話があるでは無いか」と相対論的真っ当なことを述べる秋成に対し、宣長は「古事記は外国のものとは違って真実なのだ、なぜ分からないのか」と、かなり苦しい主張で反論します。果てに、「自国を強いて貶めるのは外国かぶれだ」と秋成を批判。……なんだか、200年以上前の言説とは思えませんね。
こう書くと宣長を悪く言ってばかりのようですが、彼の思想がその後の時代に大きな影響を与えたことを考えると、やっぱりすごい人ではあったのです。独特のモノの見方を持ち、地道な研究と熱意でその感性を一貫するというのが非凡なのでありましょう。