「推定少女」

推定少女 (ファミ通文庫)

読了。とても良かったです。読み終わって切ないような寂しいような余韻が心に染み入りました。１５歳の少女、巣籠カナの負けられない戦い。先日読んだ「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」と同様、思春期の女の子の描写が見事です。無理解な大人達とか、窮屈な社会の仕組みとか、良く分からない自分と、自分の未来のこととか。僕自身はそういう反発心みたいなものはさほど強く無かったんですけど、それでもかつての中高生だったころの自分を思い起こさせられました。ちょっと大人たちの書かれ方が悪く偏ってるように見えますが、それも彼女から見た真実ということなのでしょう。
もやもやした心を抱えつつも平穏ではあった日々が崩れ、カナが余儀なくされた逃避行。ゴミ捨て場で凍っていた謎の少女・白雪や火機戦士・千春との道行きは、せっぱつまっているのと同時に、どこか同年代同士のあたたかさも感じさせます。そして交差する現実と幻。少しの不思議さを含んだ結末は、彼女に何を残したのでしょうか……。カナの身を守るのが白雪の渡した本物の銃であるという点は、「砂糖菓子の弾丸」に対照するものがありました。

「大人になってもそれは巣籠カナだからね。今の巣籠カナだからね」

お話の作りも上手く、大人が読めば懐かしさを、同世代が読めば共感を覚える一作に仕上がっていると思いました。桜庭さんの本は「砂糖菓子〜」も素晴らしかったですし、これからも要チェックですね。ファンになっちゃうかも。

Ｐ.Ｓ　何で「No image」なんだろう、Amazon……。