シンフォニック=レイン日記 その8

シナリオ面以外の色々と総評です

・絵
幼い感じではありますが、やわらかくて温かい絵柄は好感が持てました。ただ、イベントCGの背景がやたら薄かったのは残念でしたね。枚数ももうちょっと欲しかったかなと。


・音楽
音楽をテーマにしたゲームでもありますし、岡崎律子さんが作詞作曲をされたということで、ある意味シンフォニックレインの中心でもある部分。やはり注目は歌ですね。僕は特別に岡崎さんのファンというわけでもないですが、やさしく、あるいは切ないゆったりとした歌の数々は、ストーリーにマッチした歌詞や声優さんの歌唱力ともあいまって、並のゲームの挿入歌のレベルを大きく超えていたとも思います。反面、その曲調からオープニング曲やエンディング曲としての「引き」「インパクト」は弱かったかなとも感じましたが。印象的だったのは「空の向こうに」のほか「雨のmusique」「fay」「秘密」などでしょうか。余談ですが「秘密」は歌詞がそのまますぎで、トルタはクリスの前で歌っていて良いのだろうかと心配になってしまうほどですね。あるいはお互い分かっていつつも流したのでしょうか……。だったらすごい。
なおBGMについては「弱い」というのが率直なところ。歌のアレンジがほとんどだけにどうしてもバリエーションに欠ける感がありました。


・演奏ゲーム
最初は頑張って挑戦していたのですがだんだんあきらめモードに。僕は普通のビジュアルノベル期待で買ったので、ESCで飛ばすことにしてしまいました。まあお話のほうは読み終えましたので、これからじっくりやってみようかと思います。


・システム
全体的には普通に機能がそろっていて可も無く不可もなくという感じですが、いくつか不満点もありました。時々文字スピードが遅くなってしまうこととか、セーブの記載が日付だけでどの辺なのか分かりにくいところとか、FreePlayは文字の出が遅いのでカラオケには苦しいですとか(笑)。個人的にはフォントで明朝体を選べるようにして欲しかったです。……大抵のノベルってゴシック体がデフォルトになってる気がしますが、明朝派も相当数いると思うんですけどねえ(丸文字派とかもいるんでしょうか?)。

あと、フォーニのシナリオでだんだんCG欄が追加されてく演出はよかったです。


・総評

「傑作」と呼ぶにはややパンチ力不足かなというところでしたが、「良作」であるのは疑いの無いところでしょう。何より、好きな作品かと問われれば間違いなく「YES」と答えられる作品となりました。トルタの思い、アルの思い、フォーニの思い。そしてクリスの選ぶ道。どれもしんみりと心に伝わってきました。もちろん忘れてはならないファルさんの魅力も(笑) 思うに、この作品最大の長所は自然自然にプレイヤーに感情移入させるキャラクターの書き方でしょう。主人公に対し、「え、なんでそこでそんな行動をとるの?」というようなことがほとんどありません(例外はリセをグラーヴェに連れ去られちゃうところですかね。ただあそこの場面もしょうがない状況ではありましたが)。やはりなんだかんだ言っても良い作品というのはそういう基本の文章力なのかなと、あらためて思わされました。
一方、ちょっと疑問に感じてしまったのは作品全体のテーマでしょうか。プレイしている最中は面白かったので全然気になりませんでしたが、終わってみると「はて、このお話は一体何が書きたかったのだろう?」という印象が残ってしまいました。音楽を通じた成長物語なのか、トルタの切ない思いなのか。それとも双子や雨のトリックなのか。変に重苦しいファルとリセシナリオの存在もあって、いささか中途半端に融合しきれていないように思われました。あと、これまでの感想でも書いたように色々不完全燃焼な部分も多くて。トルタはal fine で相当書かれますのでOKですが、ファルの話、リセの話、アルの話。まだまだ読みたかったです。
ともあれ、まとめてみればとても良い作品でした。スタッフの皆さんありがとうございました。


P・S
Q’tronさんのシナリオは初めてでしたが、これで他の作品にも触れたくなりました。とりあえずKIDさんには早々に「My Merry May」シリーズを再販していただきたいですね。できれば廉価版で。