「ICO -霧の城-」

ICO  -霧の城-

ICO -霧の城-

PS2で好評だったゲームを、ファンの一人でもある宮部みゆきさんがノベライズするということで注目された一冊です。原作ゲームがかなり謎の残るというか説明を抑えた世界観だっただけに、どういう風にお話をまとめるだろうかと興味がありましたが、そこは宮部さん。原作の雰囲気を壊さず上手く膨らませてあると思いました。もっともこの点については、「原作の神秘的な雰囲気を削いでしまっている」という見方もかなりあるようですので、人それぞれ、ゲーム版に持ったイメージに左右されるといえるかもしれません。上記のように僕にとっては問題なかったのですが。
ストーリーの大筋はゲームの流れに沿っていて、イコが霧の城に送られてヨルダと出合って……ということで進みます。ゲームにおけるギミック部分の進行も割と忠実に文章化してあるあたりは良くも悪くもノベライズらしさでしょうか。なにやら久美沙織さんのドラクエ小説を思い出しました。なかで個人的に一番面白かったのはオリジナル色の強い「ヨルダ・時の娘」編ですね。賢く勇気あるお姫様ヨルダ萌えです。ただ、全体的にオリジナル部分とゲーム準拠部分の流れが完全に溶け合っていないというのは否めないかもしれません。
総評としては、かなり楽しめたので満足です。もっともICOはあくまでゲームが主だと思いますので、ゲームをプレイの上でこの本を読むのがベストかなと。あの城の風景はいかに宮部さんが筆致を尽くそうとも、一見に如かずなところがありますし。そう考えると、ICOのノベライズというのはあらためて難事だっただろうなあと思いますね。

余談ですが、個人的にやたら疑問なのがこの作品が「週刊現代」連載だったこと。どう考えても読者層が重なってないような気がするんですけどねえ……。