日本シリーズ第五戦 西武ライオンズ1−6中日ドラゴンズ

涙が出るほど悔しい試合、辛い試合でした。これがただの負けだったのなら、それほどダメージは無かったでしょう。「西口は良く頑張ったが川上が良すぎた。しょうがない」で終わっていたはずです。でも、残念ながら今日の一敗はそれで済ませることはできませんでした。ライオンズは二つの点で、ドラゴンズに大きく劣っていたと思われたからです。
一つは当然ながら野球の内容。しっかり戦った上での力負けなら納得もいきますが、実際は守備力の差が大きく流れを左右してしまいました。9回まで3−1のドラゴンズリードで進みましたが、ドラゴンズの先取点は怠慢とも言えるライオンズ中継プレーの乱れと、中島のバックホームの悪送球が生み出したもの。一方でドラゴンズは、ライオンズ唯一の得点機となった小関の二塁打の際、一塁ランナーをホームブロックで刺し、反撃の機運を一気にそぎました。この差が無ければ同点どころか、ライオンズが優位に試合を進められたかもしれません。もともと守備はドラゴンズのほうが上と認識していたとはいえ、かつて鉄壁の守備力を誇ったライオンズ守備陣の現状の力は悲しいばかりでした。
そしてもう一つ。これは今日球場で観戦をして痛切に感じたことなのですが、応援の差です。9回表、立浪とアレックスのホームランが出たときの、球場全体を揺るがすようなドラゴンズファンの歓声はどうでしょう。さらに9回裏はライオンズファン最後の声援も岩瀬コールに飲み込まれ、試合終了の際には三塁側のみならず、一塁側でも集ったドラゴンズファンが勝利の叫びをあげる有様。


……はっきり言って、屈辱的でした。


ここはナゴヤドームではないのです。ホーム球場なのに、それも日本シリーズという晴れ舞台なのに、なぜこんな状況になってしまうのか……。何か絶望的な感覚をさえ覚えてしまいました。
もちろん、冷静に見ればこんなことは「何をいまさら」なのでしょう。02年巨人との戦いは言うに及ばず、98年横浜との戦いでも西武ドームは横浜ファンの方が多かったような気がします。いや、何もシリーズやセリーグチームを持ち出すまでもありません。開幕のロッテ戦では明らかにロッテの黒い応援団の方が声が出ていました。先のプレーオフでも日本ハムファンとの比率はせいぜい5分5分かという感じでした。本拠地ですら主導権を握れないのがライオンズファンの実情。そう分かってはおりました。けれど、こうもあらためて見せつけられたのでは……やはり大きなショックでした。
本当に、なぜこんなことになっているのでしょうか? 西武ドームの集客については良く交通の便が云々されますが、相手ファンとの比較では理由になりません。ファンの熱意というものも、多少の差はあることでしょうが、平均化すればそれほど異なるとは思いません。結局これは単純な話「絶対数が少ない」のでしょう。でもそもそもそれはなぜ? 「安定した強さ」という点では間違いなく12球団1なのに。FAや自由枠で選手を集めるわけでもなく、スカウトの眼力とファームの育成でチームを築くというのも誇れるのに。客観的に見ても、決して魅力のないチームではないはずなのに。……やはり答えは地理的な問題ということになってしまうのでしょうか。
いずれにせよ、ファン自身が情けなく思ってしまうほどですから、おそらく選手達も感じてしまっているはずです。かつて秋山が、そして工藤がダイエーホークス時代に言いました。「こんな熱心な応援を受けたことは初めてなので嬉しい」 ホークスファンに対しての言葉でしたが、ライオンズファンにとってはただただ悲しかったコメントでした。一体こんなことが終わる日はライオンズに訪れるのでしょうか。
……第6戦、松坂はドラゴンズファンで満員のナゴヤドームで、完封勝利をあげるかもしれません。でも、きっと今日感じた寂しさはそれでは埋まらないんだろうなと思われるのです。