CLANNAD感想 その9

今回は特に長いなあ……。CLANNADカテゴリでもうかなり文章書いたような気がします。


・AfterStory

説明書には「隠しシナリオ」と書いてある訳ですが、実際上はCLANNADにおける最重要部分であるアフターストーリー。僕もCLANNADといえば結局ここを思い浮かべますし、一番感銘を受けたところでした。それだけに、他のキャラ全員攻略しないとたどり着けない構成というのはどうかと思いますが……。
長い話なのでざくざくと行きますが、何が一番良かったかというと、そのリアリティだと思います。就職とか、結婚とか、出産とか。今までのKEYの作品やCLANNADの学生時代編(仮称)では出てこなかった雰囲気。もちろん完全にリアルとは行きませんが、十分に現実感を感じさせてくれるストーリーにはひかれました。特に、知人である芳野さんのツテで就職し、苦労し、失敗しながらも少しづつ認められていく朋也の姿は、社会人としては身につまされ、学生さんには少し将来の参考になったのではないでしょうか。その辺にも全年齢版にした理由はありそうな気はしました。一方、ヒロインの渚も学生時代編より一段と魅力アップ。卒業式がとても良かったです。本当に、ゲーム開始時と比べてずいぶんたくましくなりました。


以下少し分けまして。


・同棲編
今時ああいったアパートに二人で住んでというのがどのくらいあるのか分かりませんが、そんな古典的な設定が妙にぴったりはまります。KEY作品ってあまりコンピュータとか携帯電話とか出てこなくて、どちらかいうと10年位前の雰囲気がありますよね。日本人の心に訴えかけるノスタルジアといいますか。そして、まだ若い二人を支える秋生さんと早苗さんの心遣いも身に沁みます。学生時代の友人達とは離れ離れになっても、また新たな出会いと人間関係の中で進むというのが示されていたように感じました。直幸の拘置所行きで憤る朋也と押しとどめる渚。そこで結婚を約すというのは名シーンの一つ。認めさせるための秋生さんとの野球勝負というのもベタながら燃えました。ただ少しだけ引っかかったのは岡崎の姓になることがさも当然のように決まっていたことでしょうかね。確かに大部分は男性の姓になるとはいえ、選択性なんですから。特に朋也の場合、むしろ古河家のほうに愛着があったんじゃないかという気もしますし。多少考慮の余地はあったはず。というか、こういうときこそノベルの長所で選択肢つくればよかったように思います。


・誕生編
てっきり同棲編の次は結婚編かと思ったのですが、セーブしてみると誕生編とあるではないですか。これには驚きました。テーマが家族だというのはこういう方向性だったのかと。ギャルゲーにおいて、というよりゲームにおいてこれほどまでに妊娠が嬉しいこととして書かれていた例は他にあんまり無いのではないでしょうか(個人的に思い浮かぶのはドラクエ5くらいです)。まあちょっと計画性なかったようなのはどうかと思うのですが。あの二人の経済力ではね……。しかしその辺はこの展開において野暮でもあるので置いときましょう。つわりの苦労とか、男性側の無力感とか、そういった情景、日々の描写はCLANNADにおける白眉であるように感じられました。
……しかし残念ながら、同時にこの誕生編はCLANNADのなかで最も納得のいかないものにもなってしまっています。とにかく言えることは一つ、「なんで渚が死ななければならないのか?」 自宅出産というのを渚が言い出したのは分かります。それ自体はお話としても興味深いです。でもそれはあくまで渚の健康が第一条件だったはず。なぜ母体が危険になったのに手をこまねいているのでしょうか? あくまで出産を求めるにしても、病院に入れるのが当たり前のはずです。どうもこのあたり、キャラを「死なせるために死なす」ような流れだったような感があって、悲しむよりむしろ呆然としてしまいました。無事出産でよかったように思うのですけどねえ……。


・汐編
事実上CLANNADのクライマックスを飾る汐編です。もう色々と泣けました。最初朋也が半ば自暴自棄になっているというのは、渚との誓いを考えると納得のいかないところですが、次第次第に汐と打ち解けていくお話はやはり感動的としかいえませんでした。風子が久々に登場して場を和ませてくれるのもグッド(残念ながら杏の再登場はまだ見てないです……)。そして、この物語において引っ張りに引っ張った直幸との和解。これについてはずいぶんと朋也が甘いような気はします。直幸のやってきたことはやはりあまり褒められたものではないでしょうし。ただ、その是非はともかくとしても直幸は直幸なりの全力を尽くしてきたのだと、朋也がそれを認められたということなのかな、と思いました。ようやく打ち解けた親子の時間。しかし最後汐は熱で苦しみ、朋也とともに光の中に呑み込まれてしまいます。……これ、死んだという明確な描写は無いので、何とか助かったというふうに考えたいのですが、やっぱりダメなんでしょうか? 汐編はトゥルーエンドとはまた違う世界なのですから、これで汐まで失って終わりではあまりに悲しすぎますよ。


・渚トゥルーエンド
見どころは渚の笑顔。しかし、正直蛇足の感は否めず、CLANNAD評価をやや引き下げてしまっています。上でも書きましたが、そもそも渚の死は必要なかったのではないかと思いますし、仮にそれが避けられないものだとしても、汐編をチャラにしてまで奇跡に頼るという構成は疑問でした。特に一番失敗していると思えたのは、それまで特に前面に出ていなかった「町の思い」が突如奇跡の源として言及されていることでしょうか。こちらとしてはいきなりそう言われましても戸惑ってしまいます。だいたい、昨今の都市化で一体感の薄くなった町の住民としては、実感のわきにくいところでもありますし(田舎住まいならまた違うのかもしれませんが……)。最初から提示されていた幻想世界との絡み方も含め、はっきりいってうまくまとまりきっていないように感じられてしまいました。う〜ん、残念。


ともあれ、大ボリュームだった物語もこれでおしまい。十二分に楽しませてもらいました。あの家族に、どうか幸せな未来を。