「忘却の旋律」感想

「勝ったのは、モンスターたちの方でした」と、穏やかな語り口で物騒なことを言われつつ始まったメロスの戦士の物語。”シュールな”という形容で正しいのかどうか分かりませんが、通常のアニメ以上に現実感を感じさせない絵と、そこにのせられる演出にはいつも感心してしまいます。あの怪しげな設定の数々、いったいどうやって考えてるんでしょうかね? 深いのか浅いのか、意味があるのか無いのかさえも良く分からない表現は、見ていて良い感じに頭がクラクラしてきます。それでいて話の方は「メロスの戦士となったボッカが小夜子と旅をしつつモンスターを倒す」という基本線で、割と受け止めやすくされているのですから上手いもの。
さて今後はどうなってきますか。最初は、「善人だろうけど感情移入しにくい」キャラだったボッカもだんだん主人公らしく見えてきました。世界やキャラに慣れてくるとしだいに物語が楽しくなってくるというのは少女革命ウテナでも同様でしたので、この作品も後半の加速が期待できそうです。……もっとも、J.A.シーザー氏の歌が無い時点でどうしてもウテナには勝てなさそうな気もいたしますが。


……それにしても、ウテナからもう7年ですか。忘却見ている人の中にはウテナ知らない方も結構多いんでしょうね。でももしこの文章を御覧の方でそういう方がいらしたら(そして割と忘却の雰囲気を好きでしたら)、強く申し上げたいと思います。「ウテナは見ておくべきですよ」と。あれは傑作です。