「穢翼のユースティア オリジナルサウンドトラック」感想


勢いで購入したユースティアのサントラです。なんとCD5枚組の大容量。ゲーム中の曲をすべて2ループで収録し、なおかつ歌にアレンジ曲も放り込まれた完全版です。妥協無く良いサントラを送り出そうという心意気が良いですね。ただ、2ループにした分、1曲あたりの長さは増して、4分5分は当たり前に。地味めな曲だとちょっと退屈になる時もありますが。なお、表紙はメインヒロインのティアを差しおいて聖女様です。まあ、確かに作中で音楽に関わりそうなヒロインって彼女くらいですしね……。


では、キャラのテーマを中心に、印象的だった曲を取り上げてみましょう。一応少々ネタバレ含みです。



「Far Afield」
ティアのテーマです。ティアというと、全体的にはエリスが言うところの小動物的な、ちょっと卑屈ながらも明るくめげないお気楽さが印象的なわけですが、この曲は第5章のみの使用とあって、彼女のシリアスな面を表していますね。切なく、美しく、悲しげなメロディが、まさにメインヒロインにふさわしく耳に残るテーマとなっております。ヴァイオリンアレンジ版の「Pure Heart」では、寂しさと美しさがさらに引き立っていて、原曲と甲乙つけがたい魅力。


名前が近いこともあって、なんとなくFF6のティナのテーマを連想したり。曲調はかなり違いますが、ディスク2枚目の1曲目という共通点もあるのです。



「Una Atadura」
エリスのテーマ。これは地味に名曲でしょう。エリスのもつ、柔らかく、それでいて鬱陶しくまとわりつくような重めの雰囲気が良く出ています。作曲者も「すんなり完成した」と語るだけあって、キャラの特性を十分に把握した曲ということになるのでしょう。


また、フルートアレンジの「Passionata」がこの曲の魅力をさらに引き出しています。原曲とは異なり、軽々と飛んでいけそうなエリスです。物語終盤の彼女の成長を感じさせる名アレンジと言えましょう。



「Saint Twinkle」
聖女イレーヌ、すなわちコレットのテーマ曲。ゲーム中でも彼女の登場とともに流れますので、一番「キャラのテーマ曲」というのが分かりやすかったです。実を言うと、他の曲はライナーノートで読むまでテーマ曲だと理解してませんでした。


……なのではありますが、曲の印象としては可もなく不可もなく。優しく儚げなイメージのメロディですが、コレットのイメージってどっちか言うと芯の強さだったりしますので、なんとなく合わない気がするのですよ。



「Innocence」
リシアのテーマ曲です。どこか王宮らしい優雅さを思わせますが、同時に、ちょっと暗めの雰囲気をも漂わせていますね。元気なちびっこ王女様のイメージとは一味違う感じですが、王宮のなかでお飾りとして孤独に過ごしてきた彼女の側面を示しているのでしょう。



「Rain」
フィオネのテーマ曲と知って驚いたのは僕だけでしょうか? 妙に暗い、曲名通りジメジメした感じの曲なので、牢獄の汎用テーマかと思ってましたよ。う〜ん、確かに劇中で悩んでいることの多い彼女ですが、もうちょっと勇ましい感じを出しても良かったんじゃないかなと思うところです。



「Phalaenopsis」
キャラテーマの中ではティアとエリスに続いて好きです。物語のキーパーソン、ルキウスのテーマ。彼の自信と堂々とした歩みぶりとが目に浮かぶようです。なんとなくリピートしたくなる曲。


なお、曲名は「コチョウラン」の意味のようです。……なぜコチョウラン



「Lira」「Musa」
第3章で重要な役割を担った、コレットとラヴィリアが弾いたハープ曲です。シンプルながらも美しく、沁み入るような2曲です。



「Crossandra」
王城のテーマです。ライナーノートでは貴族の策謀や闘争について書かれていますが、曲自体は素直に力強くかっこ良い感じで、ルキウスのテーマに通じるところがありますね。王族としての責務に目覚めたリシアのバックに流れると、さらに良さが増します。



「La Rosa」
力強さとかっこよさでは多分本作No.1。なんといっても、リシアがヴァリアスを説得する場面での使用が印象的でした。聴くだけで感涙ものです。リシアのテーマのアレンジですが、メロディの前向きさは180度違うと言っても良いほど。上手いものですねえ。



「Asphodelus」
主題歌です。主題歌らしいテンポの良さと、シリアスな本作にふさわしい悲劇性を感じさせてくれる歌ですね。ゲーム版のOPも良いですが、これがアニメで使われたら盛り上がるだろうなと妄想してしまいますよ。



とりあえず、ヘビーローテーションなのはこんなあたりですかね。ゲームのBGMという性質上、一曲一曲がすごく目立つというわけでもないのですが、その充実した内容もあって、ファンならば十分に納得できるサントラであろうかと思います。