「セイバーメトリクス・マガジン1」

セイバーメトリクス・マガジン1

セイバーメトリクス・マガジン1

  • 作者: デルタ,蛭川皓平,森嶋俊行,高多薪吾,KY,久保田市郎,道作,李啓充,三宅博人,Student
  • 出版社/メーカー: デルタクリエイティブ
  • 発売日: 2012/10/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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今春に「プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート1」を書いたメンバーによる、今シーズンを振り返ってのセイバーメトリクス本です。今回は一般書店での販売はなされていないようなので、入手方法はサイトからの直販か、アマゾンでどうぞ。大きくて紙質も立派だった「リポート」と異なり、コンパクトになりましたが、その分お値段は半分以下の1,000円(リポートは2,310円)と、買いやすくなりました。むしろ最初からこのサイズで良かったのかもです。


肝心の中身ですが、「リポート」と変わらず充実、というより、記事としての面白さという点では本書の方が勝っていると思いました。特に面白かったのは「ペイロールとポジション別総合評価から考える補強方針」(長い記事名だ……)。これは各球団のポジションごとに強み弱みを浮き彫りにし、余裕資金の状況から補強ポイントを検討するというものです。


たとえば西武でいうと、プラス評価なのはショート、先発投手、センター、キャッチャーの順であることが分かります。さらに野手は攻撃・守備に分かれているので、それぞれの評価もくっきり。ショートは守備のマイナスを圧倒的な攻撃力で上回り、センターは攻撃も守備もバランス良く上積みし、キャッチャーはショートとは逆に打撃のマイナスを守備で挽回しています。あくまでポジション別であって選手名は出ていませんが、西武の場合、ショート=中島、センター=秋山、キャッチャー=炭谷の評価と見なして良いでしょう(センターはヘルマンの時期もありましたが)。もうこれだけ見ても実に面白いです。そういえば守備マイナスの中島がゴールデングラブ賞獲っちゃいましたねえ……(汗)。


なお、他球団に比べてマイナス評価なのは言うまでもなく……です。そう、救援投手陣ですね。12球団見回しても圧倒的最下位となる、マイナス40点超という数値を叩きだしてくれています。途中から長田、ウィリアムス、涌井が頑張ったのにこれかあ……。来季の西武は、中島のプラス30点分の損失補填に加え、救援陣の整備が勝負の鍵を握りそうです。


他にも面白い記事たっぷりで満足感高かったですが、少々残念だったのは、一部の数字がシーズン終了前のものであること。原稿の締め切りが早めだったのでしょうか? 選手の退団予想も現時点で見ると、必ずしも正確とは言えません。この手の趣味本は買う人は買うでしょうから、そんなに出版時期を焦らなくても良かったんじゃないかと思いますね。


ついでに、本書とは直接関係ありませんが、セイバーメトリクスのデータ・記事サイトとして注目された「Baseball LAB」さんが延々更新停止したあげく、ずいぶん毛色の違ったサイトになってしまったのは残念に思うところでありますよ。方針を変えるにしても、読者に対する説明がもう少し欲しかったかと。


まあ、そんなあたりはともあれ、本書は野球好きには間違いなくお勧めの一冊です。タイトルに「1」とありますので、今後の発展も期待しています。