「プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート1」

プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート1

プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート1

買いました。日本初(?)かもしれない本格的セイバーメトリクス本。各チームの選手構成、去年の成績分析はもちろんのこと、成績予測、オールタイムベストナインやバント、盗塁と勝率の関係といったコラム系記事も充実しており、セイバーメトリクスに多少の興味がある野球ファンなら、十分楽しめるものとなっていると思います。お値段2,310円はちょっと高いかなという気もしますけどね(版が大きめですし良い紙使ってますので、それにしては安いとも言えますが)。


なかでも面白かったのは「年齢の変化と成績の関係」で、まず、打者は20台中盤まで力を伸ばし、27歳でピークを迎え、その後力が落ちていくということ。まあ、これは一応分かりやすいです。驚いたのが、投手が「年齢を重ねると下落するのみ」という結果が出ていることで、つまり、たとえ23歳の若手であっても、平均的には22歳よりも力が落ちるという話のようです。その後も、年を取ると力が落ちていく一方とか。


直感には反する説で、「そんな馬鹿な。ダルビッシュも田中マー君も年々成長しているじゃないか」と反論したくなりますが、よく考えると、「有り得る話かもしれない」という気もしてくるから不思議なところ。


思うに、このデータは投手が従来の予想以上に消耗品的な存在であるということを示しているのでしょう。投手とて若い頃は体力も技術力も成長するのでしょうが、それ以上に消耗してしまう場合が多いということではないでしょうか(特に、このデータは厳しい一軍での実戦が元になっているのでしょうから)。元の力が70の投手がいたとして、成長分が+10でも、消耗分が−15になってしまうとか。


それこそダルビッシュや田中のような毎年ローテーションに加わり、成長を見せるレベルの選手は一部の天才ということになるのかもしれません。それと同時に、それ以外の「平凡」な投手の起用法についても、一石を投じる様なデータである気がします(どうせ消耗するのなら使い潰すくらいで良いのか? あるいはもっと大切に扱えば、より大きく成長できるのか?)。


そんなこんなでいろいろ面白い一冊でしたが、いくつか不満も。特に大きいのは「守備指標の話がもっと欲しかった」というところで、「セイバーメトリクスゴールデングラブ」のような企画が読みたかったですね。あと、成績予測コーナーがありましたが、中島、栗山が2割9分にも到達しないとか、中村がようやく30本とか、予測とは言え、西武ファンとしては「ちょっと低すぎるんでないの?」と思ってしまいました。セ・リーグでは3割打者0人ですし、全体的に数値が低調過ぎるような?


そうそう、詳細な今期展望がセ・リーグだけというのもいかがなものかと思われましたよ。ライターさんがパ・リーグに詳しくなかったのかもしれませんが、パ・リーグファンとしてはいささか寂しいところではありました。


ともあれ、記念すべき年刊第1弾ということで、今後の継続と一層の発展を願っております(ところで、最近「SMRベースボールLab」が一向に更新されないのは、ライターさん達が本書にかかりきりになっていたからでしょうかねえ? あそこのコラムも楽しみにしているんですが)。