「青の炎」

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

高校生の少年が母と妹を守るべく、元義父の曾根を殺害することを決意。完全犯罪を目論むという倒叙型ミステリ。何でも映画化もされたそうで。「日本ミステリー史に残る感動の名作」(Amazonの紹介文)はちょっと言い過ぎかもしれませんが、面白く読めました。


主人公の秀一は名前の通りの優等生で、正義感も強い少年。家族のため、それが正義と殺人を決行しますが、やがて追い詰められていきます。これだけ見れば切なく悲しい物語ですが、反面で、やはり彼は傲慢であり、ただの私欲のための殺人者ではないかと思わせる部分もある。この相反する要素を作者が主張しすぎずに同居させているなと思いました。イメージとしてはデスノート夜神月にかぶる部分があります。いずれにせよ、殺人を犯してしまったあとの重い心理描写は胸に迫るものがありました。


クラスで人気の美少女とか兄を慕う妹とか、どことなくアニメ・ゲーム文化の影響を感じさせるのは、まあ一長一短というところでしょうかねえ。作者の他の作品も読んでみたくなりました。