「とある飛空士への恋歌 5」

とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)

「読みたいのに、もったいなくて読めない」なんて本が時々あったりします。これを読んだらもう終わってしまうという寂しさ。物語の結末を知る怖さ。本書も、そんな思いを抱かせてくれた一冊でした。買ったのは発売日すぐだったんですけどね。


クレアとの別れ。世界の秘密と空の果てへの到達。イスラの旅路の終焉。そして、カルエルの新たな旅立ちまで、感動のフィナーレでした。


ただ、構成には正直ちょっと不満が残りました。全体的に端折り過ぎというか、見たかったシーンが大幅に省略されている感があります。一番はやはりカルとクレアの未来ですが、それ以外にもクレアやカルの正体が仲間に知られるところだとか、クレアが(ニナではなくクレアの姿で)イスラの住人に別れを告げる部分も欲しかった。空族王子ももうちょっと役割があっても良かったのでは? いずれにせよ、最終巻でヒロインの存在が薄いのは残念でした。さらに(誰も気にしてないかもしれませんが)4人議会のひとりのはずなのに出番がさっぱりさっぱりだった財務長マルクスさん。せめて一度くらいは見せ場があっても良かったのに……。


余韻と想像を残したエンドではありましたが「本当に5巻で完結の予定だったのだろうか?」と思ってしまったのも事実です。1〜4巻までのペースで膨らませれば10巻くらいには充実できたと思いますし、それだけ読んでみたかったなあ。まあ、それを差し引いても良作なのですが。アリエルには新しい恋の幸せが訪れることを願ってます。書かれなかった部分は想像で補完ですかね。


あと、ファナや海猫さんもファンサービス的に登場していましたが、あくまで最低限の出番にとどめているのは作者の見識と思いました。やっぱり、「追憶」はあれで完結しているので、他作品で後日談やられても変だと思うので。


……とはいえ、気になるのは気になりますね。ファナはレヴァームの実権を握ったようですが、カルロ皇子はどうしてるんですかねえ。個人的には、ファナが皇子を尻にしいてビシビシ教育すれば、結構上手くいく夫婦になるんじゃないかと期待してるんですが、そんなカップリングを望むのは少数派かも。