「超・階級 スーパークラス」

超・階級 スーパークラス

超・階級 スーパークラス

地域を越え、国を超え、グローバルに世界を動かす力を持った人々。歴史上初めて現れた彼ら「超階級(スーパークラス)」について論じた一冊です。経済、政治、軍、芸能といった諸々の分野で成功したエリート達。著者は世界の6千人をこの超階級として分類し、その影響力と功罪を分析します。


たとえば経済。今、世界で950万人ほどの「個人富裕層」は100万ドル以上の資産を持つそうです。そしてその個人富裕層の1%、約9万5000人が3000万ドル以上の資産を持つ「個人超富裕層」だとか。これだけでも頭がくらくらしてくる世界ですが、本書の対象はまだこの先。個人超富裕層のさらに1%。世界で1000人ほどの「億万長者」なのです。


彼らは数十億円するプライベートジェットを乗りこなし、他の超階級との人脈を深め、さらに勢力を拡大していきます。よく指摘されることですが、アメリカの企業トップの報酬は近年ものすごい勢いで上昇し、一般従業員との差は広がるばかりのようで。グローバル企業はもはや国に縛られず、世界中に権力を広げているのです。


経済人だけでなく、政治や軍事、宗教やスポーツ、芸能などで多大な影響力を持つ人も超階級に含まれます。そして超階級同士の親交は(何しろ6千人という狭い世界なので)、公的あるいは私的な会合を通じてどんどん深まっていくとか。


注意しておきますと、本書は決して超階級のバッシング本ではありません。また、「やつらが全てを決めている」的な陰謀論の類でもありません。著者自身、クリントン政権に参加したり、会社を興したりしているなかなかすごい人で、「超階級に近づけるけど超階級ではない」ような立場にいます。だから超階級の集まるダボス会議に実際に参加し、その実情をつぶさに観察したりも出来る。その距離感が本書の貴重な価値になっているように思われます。


「それぞれ100万人に1人の逸材」である超階級の人々。そのコメントを見ていくと、さすがに優秀でパワフルな人が多いし、決して世の中を私利私欲のためだけに牛耳ろうとしているわけではない(一部には怪しい人もいますが)というのが伝わってきます。


ただ、そうは言っても、性質の似通った成功者ばかりが物事を決定していくと、方向が偏ってしまうということも著者は懸念します。何より、一応国民に選ばれた政治家ならともかく(しかし、その選挙も資金力と宣伝力が大きく作用するのですが)、果たして経済人にどこまで正当な権力があるのか? これから未来に向け超階級がどのような盛衰をたどるのか。答えは出ませんが、考えさせられ、興味深い世界でした。


それにしても、あまりにスケールが違うので、うらやましがる気にもなれないってものです。