「Fate/Zero 4」

もしかしたら本編よりも面白いんじゃないかとさえ思わせる一大聖杯戦争ドラマがついに完結! 最後までその勢いが衰えることなく、それどころか加速して走りきった素晴らしい作品でした。虚淵玄さんの実力についてはPhantomで承知しておりましたが、まさに期待以上のFate世界を見せてもらいましたよ。


Fate本編をプレイしていれば暗い結末は予想出来たことではありますが、その予想以上に悲痛なラストでした。切嗣と綺礼の、サーヴァントを介さず人間業とは思えないレベルの激闘に驚き。綺礼ってあんなに強かったんですねえ……。そして何も達することの出来ないまま、疑念と絶望だけを抱いて消えていったセイバー。あんな終わり方では、次の召還に応えて士郎の前に立ったときに、厳しめの表情だったのも無理からぬことであり、士郎の甘さに不安を覚えて当然というものです。ただ結果的に士郎こそが彼女を救えるところが面白い。こうして、物語世界に対する想像を広げてくれるあたりも、良い二次創作の妙というものです。


暗い展開の中で唯一の救いともいえるのがウェイバーでした。当初は彼がここまで立派になるとはとても想像していませんでしたが、見事に成長し、本作の清涼剤的存在となってくれました。第5次聖杯戦争の行われていた頃、、彼がどこで何を思っていたのかと考えるのも、これまた楽しいです。


内容的には文句のつけようがない中で、本シリーズ唯一の不満は通常の書店では売られていないことでしょうかね。おそらく解説で書かれている「商業的な二次展開は否」という虚淵玄さんの考えとも関係しているのでしょうが、需要はありそうなだけにもったいない。というかこちらとしましては「Fate/Zeroもアニメで見たいなあ」とか思ってしまうのですよ、正直。


話はそれていきますが、ついでなので。後書きを読んでいて思い起こしたのがFateのアニメ版です。あれはつくづく惜しかったですね。作画も展開も決して悪いというほどでもなかったのに、肝心の「燃え」が伝わってこなかったのが痛かった。見せ場があまり見せ場になってませんでした。やはり二次展開は難しいのですかねえ……。