「戦争の経済学」

戦争の経済学

戦争の経済学

書店でタイトルを見かけたとたん、「これは面白そうだ」と、いてもたってもいられず買ってしまいました。ハードカバーの本はコストパフォーマンスが低いのでめったに買わないんですけどね。


「戦争は経済に貢献するか?」
「徴兵制と志願兵制ではどちらがコストパフォーマンスが高い?」


等々、興味深いテーマが並びます。訳者は山形浩生さんなので、例によってくだけた読みやすい文章。スラスラといけます。


内容的には、思っていたよりもシンプルといいますか、あまり深い社会政治的側面に立ち入ってはいません。これは社会派ドキュメンタリーではなく、あくまでも経済学の教科書的一冊なのです。しかし実はこのシンプルさこそが本書の真骨頂でもありました。僕でもなんとか分かるような初歩の経済理論(限界曲線とか流動性の罠とかそういうやつです)を使うことで、おどろおどろしいイメージのある「軍需産業」とか「核拡散」の問題がすっきり分かりやすい目で見えてくるのですよ(もっとも、そんな中さりげに戦闘機の値段とか核物質の取引価格とか、ディープなネタを含めているのも見逃せません)。


経済学というのは時々正しさの怪しげな学問ではありますが、こういう論理的な視点を用意してくれるというのが、一番の力なのかもしれませんね。とりあえず「基本的に現代の戦争は儲からない」というのは納得でした。