「エレクトリックな科学革命―いかにして電気が見出され、現代を拓いたか」

エレクトリックな科学革命―いかにして電気が見出され、現代を拓いたか

エレクトリックな科学革命―いかにして電気が見出され、現代を拓いたか

表紙はエレクトリックならぬサイケデリックじゃないかというような色使いですが、内容はいたって正当な電気科学紹介の書です。数式も使わず歴史的に電気技術の発展を追った良著。僕はこういうの好きなんですよねえ。


あらためて考えさせられるのは、電気技術の新しさとその影響力の大きさです。著者はこんな風なことを書いています。


古代ローマ地方の総督が1850年のアメリカのディアボーン砦に移住してもそれほど驚かなかっただろう。しかし、60年後の1910年に同じ場所を訪れたら、圧倒されたに違いない」


電信、電球、そしてモーター。革命的といっても何の過言のない変化がそこにはあり、そして現在までも続いています。コンピュータは電気産業の王道ですからね。


また本書の面白い点は、いろいろな科学者の人物像に触れることが出来るところです。最初に出て来るのがジョセフ・ヘンリー、正直「誰?」という感じでしたが、実は電信技術に大きな貢献をした科学者だとか。アイデアに特許などのうるさいことを言わなかったため、モールスにそのアイデアをそっくり盗まれてしまったという話は初めて知りました。おかげでモールスは大富豪になり、今でもモールス信号に名前を残しているわけですが、始終、自分のパクリを訴えられないかとビクビクしていたとか。……もっとも、このへん著者の紹介がちょっと一面的ではないかという気もしないでもありませんけど。


電話の発明者として名高いベルも、耳の聞こえない少女に恋をし、そのために人間の聴覚について詳しくなり、ライバル達に先んじて電話を作れたとか。その後もベル研究所は補聴器の開発に熱心だったそうで、なかなか心温まるエピソードでした。


きっと今後とも電気は人類の生活と切り離せないものでありつづけるのでしょうね。更なる発展を期待です。