「アレクサンドロスの征服と神話」

アレクサンドロスの征服と神話 (興亡の世界史)

アレクサンドロスの征服と神話 (興亡の世界史)

ローマ人の物語」が終わったから今度はアレクサンドロス大王だ、というわけでもないんですが、有名な人ですし、もともと興味はあったんですよね。加えて「Fate/Zero」の影響もありまして本書を購入してみました。


変な感想かもしれませんが「ああ、これは歴史学の本なんだなあ」と思いました。「ローマ人の〜」が作家によるタイトルどおりの「物語」であり、ワクワクドキドキ感を強く感じさせたのに対して、こちらは学者の文章という感じがします。いや別に悪い意味ではなくて。大王の生涯を過度に英雄化せず、資料に基づいて冷静に検証していくという姿勢が印象的でした。その分大王の戦争のうまさとか、カリスマ性とか、そういった部分のけれんみは薄くなってしまってましたが、これはしょうがないでしょうか。


一代にして大帝国を築いた大王、しかし彼の死後、帝国はあっという間に分裂してしまいます。結局アレクサンドロスの帝国とは、戦争に勝った間だけ続いた程度のものにしか成りえなかったというところに、確かに彼の限界があったように思われますね。もっとも、長生きしていれば違ったかもしれない、そう思わせるところが英雄でもあるのですが。ヘレニズム文化にしても、「ギリシャ文化が東方に波及した」という見方だけでは一面的なことを指摘します。なるほど。


なお、僕の書き方がいまいちなので付け加えておきますと、著者は決して大王をけなしているわけではありません。過大視もせず、矮小化もせずというところで、歴史家らしく公平を考慮していたと思います。



P.S しかし「Fate/Zero」のイスカンダルはただの変な人になってしまっていますな。まあ英霊というのは概念だから何でも良いのですか。その割にセイバーの正体が通常概念から大きく離れているのは謎ですが。